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2017/10/07

アウトレイジ最終章 感想 ~群れを離れた狼の悲哀~【映画レビュー】

映画『アウトレイジ 最終章』本予告【HD】2017年10月7日公開

全員悪人 全員暴走 《関東【山王会】 vs関西【花菱会】》の巨大抗争後、大友(ビートたけし)は韓国に渡り、日韓を牛耳るフィクサー張会長(金田時男)の下にいた。そんな折、取引のため韓国滞在中の【花菱会】幹部・花田がトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。これをきっかけに、《国際的フィクサー【張グループ】 vs巨大暴力団組織【花菱会】》一触即発の状態に。激怒した大友は、全ての因縁に決着をつけるべく日本に戻ってくる。時を同じくして、その【花菱会】では卑劣な内紛が勃発していた......。 『アウトレイジ 最終章』2017年10月7日(土)全国ロードショー 公式サイト:http://outrage-movie.jp/ ビートたけし 西田敏行 大森南朋 ピエール瀧 松重 豊 大杉 漣 塩見三省 白竜 名高達男 光石 研 原田泰造 池内博之 津田寛治 金田時男 中村育二 岸部一徳 監督・脚本・編集:北野 武 音楽:鈴木慶一 配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野 ©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会


◆アウトレイジ最終章 感想◆


評価/オススメ:★★★★★
(3作品を通しての評価になります)


この作品ジャンルは?:
クライムサスペンス

オススメしたい人は?:
全ての働くサラリーマン

印象を一言で?:
今作は『ドラマ』・・・だとっ。

グロテスクですか?:
今回は北野バイオレンスが極めて控えめです(注意:過去2作比)
それでもやることはやっています(笑)

過去の作品は観るべき?:
「アウトレイジ」、「アウトレイジ・ビヨンド」あっての、アウトレイジ最終章です。是非まだご覧になっていない方は地上波などで描写がカットされていない完全版を鑑賞してから足を運ばれると良いでしょう。


◆synopsis◆


山王会と花菱会の巨大抗争後、大友は韓国に渡り、日韓を牛耳るフィクサー張会長の下にいた。

そんな折、取引のために韓国に来た花菱会幹部の花田がトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。

これを発端として国際的フィクサー・張グループと巨大暴力団組織・花菱会が一触即発の状態となってしまう。

発端となった事件に激怒した大友は、全ての因縁に決着をつけるべく日本に戻ってくる。

時を同じくして、その花菱会では内紛が勃発していた・・・

※公式HPより

※ネタバレ防止に付き、一部文月加筆訂正


◆comment◆



本日、2017/10/7より公開です。

文月はアウトレイジ、アウトレイジ・ビヨンドともに年に数回は観直すほどにこのシリーズが好きなのですが・・・・

・・・・うむむ!?

本作は『怒号の応酬』も『北野バイオレンス』もとても控えめ。

複雑に交錯したドロドロの人間関係の中で誰がいつ殺害されてしまうのか?
そういう方面でとてもハラハラしてしまう、シリアスな『ドラマ』になっていました。


「やぁってやっから、道具持って来いコノヤロ!」

「ウチの若いのよくも『取って』くれたなコノヤロー」


「口開けこの!治してやっからよ」

「指出せオラーーーーー!バズン!!!」

「舌出せ!出せって言ってんだろ!」

「おい『道具』出せ!」

「やれ!チンピラ!撃てよ!」

「オイ、舟木。テメェも同じようにしてやるからよ、見とけコノヤロ!ぎゅいーーん!」

「おい、元の親分の所行こうぜ・・・。あ?『大友さん』だろコノヤロ!」ドゴッ!


「野球しよっか?」

など、伝説的な台詞と極端なまでの暴力描写で世間を騒がせたアウトレイジ。

この台詞で、シーンが連動されたア・ナ・タ。
フリークですねぇ。

アウトレイジ、アウトレイジ・ビヨンドは言ってみれば『バイオレンス』を娯楽にしてしまった北野監督独特のブラック・ユーモアたっぷりの作品でした。

わたしがこの作品をものすごく好きなのは、

「組織、社会、コミュニティ」

という、利害や力関係が発生する場所で生きなければいけない人の悲哀が凝縮されているからです。

つまり、アウトレイジという作品は『ヤクザ』というアイコンに収められた『社会風刺』なのです。

どこか自分とは関係ない場所の話ではないのですぞ。

キャッチコピーの「全員悪人」というのは実はすごく深くて、
「観ているあなたは果たして善人ですか?」と問いかけられているのです。

黙々と上からの、そして組織から受けている義理を通す人。

自分の出世や責任逃れのために、誰かを利用する人。

笑顔で接しておきながら、実は裏で別のやつと繋がっている人。

上の指示という言葉を大義名分にしてなんでもやる人。

虎視眈々と相手を蹴落とすことを狙っている人、狙われている人。

そして犬ころの様に誰かを慕い、信じてついてくる人。

このアウトレイジ3部作に登場する人物はもの凄くコミカルにデフォルメされた悪人達です。

そして、自分を、自分のまわりをよーーーーく、目を凝らして、冷静に見つめてください。

多かれ少なかれ、登場人物のキャラクターや、立ち振舞い、考え方、価値観が重なって見えませんか?

いやいや、そんなやつはいないよ。

そう言える人が果たして何人いることやら。

これは皮肉でもなんでもなく『生きていくって、そういうもの』なのだとわたしたちにノックしている北野武監督からのメッセージなのです。

彼らの放つ怒号、応酬、暴力が観ている側をどこかスッキリさせるのは、取りも直さず

普段自分が抑えてできないことを代わりにやってくれているからですわ。きっと。


――そんな訳で、最終章と銘を打たれた本作ではどれだけ「スッキリ」できるのか(オイオイ(汗))を期待してスクリーンに向かったのですが・・・・


本作は暴力ではなく
「群れを離れた一匹の狼(=大友)の悲哀」
がメインのお話になっていました。

あんまり痛くないので、門戸が広まったかも(笑)

北野監督が「バラバラに見えているけど、3つでひとつの作品」と公開前のインタビューで答えていました。

本作のメインテーマは「ケジメ」なのです。

起承転結の「結」

そして見えてきた「大友」という男は、過去の北野作品で描かれた「不器用だけど懸命に生きる男」達と共通している、かっこいい男だったのです。


まず、本作を楽しむためには登場人物達が置かれた状況と主要な人間模様を知ったほうが良いでしょう。


◆大友が属する「張グループ」

(画像クリックで拡大されます)



◆そして今作で敵対するご存知「花菱会」

(画像クリックで拡大されます)



※ちなみに、ピエール瀧さん。
本作でのコメディ部分というか笑える要素はほぼ彼に集約されています。
大島渚監督の『御法度』のトミーズ雅さん並にいい味出してます。


◆過去作からの因縁の関係はこちら

(画像クリックで拡大されます)



◆大友という男が背負った『ケジメ』

そして、本作では過去の作品への配慮も忘れていません。
「ケジメ」とはアウトレイジ・サーガ全体へのケジメなのです・・・

(画像クリックで拡大されます)



◆大友を慕う若い衆

大友という男には不思議な魅力があって、作品全てに彼を強烈に慕う若い衆が登場します。
しかしながら、その若い衆達の末路も作品の熱度を上げる強いエッセンスになっていました。

(画像クリックで拡大されます)



これが作品のフレームになります。

・アウトレイジ最終章を楽しむポイント①


ますは「舎弟愛」というが本作品の見どころです。

大森南朋さん演じる本作の若い衆である「市川」。

文月としては、この市川は過去椎名桔平さん演じた「水野」、中野英雄さん演じた「木村」、ふたりの良いエッセンスを見事に受け継いだとても好感が持てる新キャラクターだったとえらく感激しましたわぁ。

激しすぎず、前に出すぎず、ひたすらに大友に従う姿がもう・・・・

それだけではありません。
悪人ながらも縦の主従関係がしっかりとしているのは、大友と市川だけではないので、
各シーンでどのラインが絡み合って動いているのかが解るととても楽しいです。

それでも、親子でも兄弟でもないのに、大友という男に惚れ込んだ市川の真っ直ぐさは萌え要素の重要な一つです。

大友と市川に共通するのは「息が詰まりそうな組織の枠より、自分の信念を通す」生き様でした。

自分がここまでできるのか?と自問自答してしまうほどの・・・


まぁ、語弊があるでしょうが、コジマプロダクションの小島秀夫監督が独立した時に集った人たちを観ているような気持ちになりました(小声)下記、リンクを貼ります。

わたしだって、ゴミ掃除係でもいいので馳せ参じたいのですが、無理だなぁ。

・アウトレイジ最終章を楽しむポイント②


『裏切り』の連鎖

冒頭でアウトレイジ最終章にハラハラさせられたと書きましたが、それは『一体誰を信じたら良いのか、大友の思惑すら解らない』ところにあります。

単純に「張グループ vs 花菱会」という構図ではないのです。

花菱会も一枚岩ではない、そして花菱会に後見されている山王会も、大友が属する張グループでさえも、しょーーーもないエゴが渦巻くドロドロの人間模様を展開します。

このあたりは北野監督お得意のコントを観ているようで、実際の鑑賞中もみなさん所々で笑い声が上がっていました。

解っちゃいるけど笑ってしまう、古典落語の境地ですな(笑)

しかし、ラストシーンを迎えるまで、誰がどの瞬間に「生命(タマ」取られてしまうのか全く油断できませんでした。

誰もが同じことを考えていて、状況をどれだけ自分の有利に持っていくか。

人間関係も、仕事も、極端な話ですとこれの繰り返しです。

その意味で、裏切りの連鎖とはフィクションの中でだけ展開するものではありませんぜ。


・アウトレイジ最終章を楽しむポイント③


それぞれの「ケジメ」

大友、張グループ、花菱会、山王会、警察と今回の事件を決着しなくてはならないのです。

互いに納得できる着地点、いわばそれぞれが落とし所をどこにするか、その腹の探り合いは内紛をコントロールしている誰もが考えて行動しています。

北野監督が描く美学とはあるひとつのベクトルに一貫して向けられていて、それが作品に漂う悲哀を一層深めているのですが、
本作品ではさらに、
それぞれが落ち着く所に落ち着いて
「一番悪い奴が天下を獲ったように見える」
収め方は、いずれまた悲劇は繰り返すのだろうとちょっぴり続編を期待してしまうような気分にさせますな。

でもアウトレイジ、アウトレイジ・ビヨンド、アウトレイジ最終章と3作品全てを観ている人はもちろんのこと、北野作品を愛している方ならば後半でピンと来る方も多いかもしれません。

アウトレイジというひとつの物語に「ケジメ」をつけるのであれば、
どうしようもなく決定的な終わりを迎える必要があるのでした。

群れを離れた狼の最後の咆哮を、是非ご自分の目でお楽しみください。

わたしはラストカットでどうしようもなく切なくなりました。


2017年映画鑑賞 165本目

◆overview◆


・原題:アウトレイジ最終章 2017年公開
・上映時間:104分
・監督:北野武
代表作:『brother』『ソナチネ』
・脚本:北野武
     

・メイン・キャスト
ビートたけし
西田敏行
大森南朋
ピエール瀧
松重豊
大杉漣
塩見三省
白竜
名高達男
光石研
原田泰造

 
  [映画感想]

2017/09/30

ドリーム 感想 ~ゴージャス、デリシャス、デカルチャー~【映画レビュー】

映画『ドリーム』予告A

映画『ドリーム』公式アカウント。 2017年 第89回アカデミー賞3部門(作品賞、助演女優賞、脚色賞)ノミネート 宇宙開発史上の偉業を支え、新しい時代を切り開いた知られざる3人の女性がいた―― 【2017年9月29日(金)全国ロードショー】 ▼公式Facebookページ https://www.facebook.com/20thFOXjp/ ▼公式Twitter ...


◆ドリーム 感想◆


評価/オススメ:★★★★★

この作品ジャンルは?:ヒューマンドラマです。

オススメしたい人は?:すべての働く人達。何かを成し遂げたい目標がある人。

印象を一言で?:本年度屈指の勇気の出る映画!

重い話ですか?:実は宇宙開発というのは作品のエッセンスのひとつで、見どころはいろいろな偏見と戦う女性たち、人間たちの物語。テーマは重いですが、天真爛漫なキャストたち明るさがそれを見事に中和しています。

◆synopsis◆


東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。
ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。

リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。

技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。

幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、白人男性だらけである職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。

それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。

※公式HPより

※ネタバレ防止に付き、一部文月によりカット

◆comment◆


日本では2017/9/29より公開。文月は幸運にも公開初日に鑑賞できました。
監督はわたしのおすすめ作品のひとつである
『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィ。

→文月の過去の紹介記事(この頃はまだ短いポスト)
『ヴィンセント~』で不覚にもおいおいと泣いてしまって以来のファンです。

よって、今回の作品は不安もなにもなく安心して劇場に足を運べました。

不安、といえば、この作品は邦題を巡って一悶着あったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
わたしも以前の投稿で言及しました。

→文月の過去の紹介記事

本作はマーキュリー計画を題材とした作品。

つまり、『ライトスタッフ』達を支えた多くの人達、とりわけ理不尽なしがらみを乗り越えて業績を残した女性達の物語です。

光と陰。

言ってみれば、ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリーの様に、これまであまり語られなかった外伝として捉えることもできますが、実話であることが本作のミソです。

よって、わたしは本作を鑑賞した後に改めて『ライト・スタッフ』を観てみるつもりです。




『ライト・スタッフ』予告編

The Right Stuff (1983) Official Trailer - Ed Harris, Dennis Quaid Movie HD

The Right Stuff (1983) Official Trailer - Ed Harris, Dennis Quaid Movie HD Subscribe to CLASSIC TRAILERS: http://bit.ly/1u43jDe Subscribe to TRAILERS: http://bit.ly/sxaw6h Subscribe to COMING SOON: http://bit.ly/H2vZUn Like us on FACEBOOK: http://bit.ly/1QyRMsE Follow us on TWITTER: http://bit.ly/1ghOWmt The story of the original Mercury 7 astronauts and their macho, seat-of-the-pants approach to the space program.


●ドリームとは?

さて、本作が描いているのは、マーキュリー計画の最大の難所であったアメリカ初の有人地球周回飛行が成功するまでの過程です。

しかしながら、意外と扱っているテーマは重いのです。

オープニングからいきなりそのものずばりの人種差別女性蔑視から始まり、
職場でのしがらみ嫌がらせ困難な課題への挑戦。

仕事を通して、そして私生活を通して、浮き上がっては頭を悩ませる現実という壁。

生きること≒働くこと というのは多くの人が共通して抱えているものですが、

この作品も『誰もおそらくが毎日感じていること』を映し出しています。

何かすごいことをした遠い国の本当にいた人のお話、という目だけで観られる人は少ないし、逆にもったいないですよ。

こう書かなくても、自分の生活とダブってしまう方は多いのではないのでしょうか(笑)


●主軸となる3人のレイディはこちら↓

(画像クリックで拡大されます)

3人とも、優れた才能を持ちながら『何かを耐えている』姿は印象的です。

彼女たちが身内だけに見せる素の姿と外での『ツン』とした態度。
どうしてそんな態度を取るのかはまさしく、
彼女たちが『耐えている』ものに起因しています。

●そんな彼女たちと関わることになる人達はこちら↓

(画像クリックで拡大されます)


面白いことに、彼らの姿勢、見識が『2対2』で別れているのも見どころです。


誰もが抱えているものと同じ、と書いたのには理由があって、

有色人種である3人の主人公だけでなく、彼女たちと関わる彼らも悩み、苦しみ、耐えているからなのです。

性別や人種など関係なく、自分の才能を活かせるところを掴み取れるということは、理屈なようで理屈でない、とんでもない事なのです。
多くの人が、何かを諦め、何かに苦しんで過ごしている。

わたしだって同じです。

ただ、今よりもはるかに不自由で理不尽なしがらみの中で、決して諦めなかった人たちがいた。

簡単に一括りにはできないし、映画として造られた以上、作中彼女たちが直面する差別という名の現実は、本当はもっと凄まじいものであったはず。

キング牧師のあの時代なのです。

それでもこの作品を明るくしているのは最高に明るくて、そして強く、デカルチャーでタフなレイディ達の姿に他なりませんな。

自分の居場所は、自分で勝ち取るもの。

そして居場所は自分でつくるもの。

つらい状況は誰にでも起こり得て、そしてその中で再起不能に陥ってしまうこともあるのだけど、

そんな時でも劇中のキャサリンのように背筋を伸ばし、

ドロシーのように図太く学び、

メアリーの様に不敵に挑む。

『ドリーム』という邦題を考えたライターさんなり、配給会社さんとしては、

彼女たちが魅せた不屈の姿に『古き良き健全なアメリカン・ドリーム』(頑張って金持ちになりましたというのではない)を見たのだろうなと考えました。

ま、『新感染』とかいう、座布団全部持っていかれそうなのボロクソタイトルと比べれば、まあアリですな。
(誤解のないように。『TRAIN TO BUSAN』はマ・ドンソクのタフガイぶりに最高に燃えた口です。はい。わたしがケチを付けているのはこの邦題。何が「新しい感染」なのか、
詳細なレポートを提出してもらいたいくらい個人的には憤ってます)


人類初の有人飛行を成し遂げた人。

アメリカ人初の地球周回軌道飛行を成し遂げた人

その陰に、アメリカの黒人女性初の偉業を成し遂げた女性がいた。

エンドロールが「良かったね!めでたし、めでたし」だけでなく
しっかりと彼女たちにフォーカスして終わります。

観る側としては、それをしっかりと心に刻むことで真のエンディングを迎えられることでしょう。


●ちなみに

IBMの特設サイトには、主人公の彼女達にフォーカスした動画もあって、改めてすごいことをした人達なんだなと脱帽しちゃいます。興味のある方は御覧ください。


しかし本作は『走る、走る』

観客席から立ち上がって応援したくなるくらい、走る。

象徴的なシーンなので必要な描写なのですが、

あたし、仕事中にあんなに走ったら、すぐに早退します。


2017年映画鑑賞 160本目


次回予告、『コノヤロー!バカヤロー!』なあの映画です(笑)

◆overview◆


・原題:Hidden Figures 2016年アメリカ公開
・上映時間:127分

・監督:セオドア・メルフィ
代表作:『ジーサンズ はじめての強盗』『ヴィンセントが教えてくれたこと』

・脚本:セオドア・メルフィ アリソン・シュローダー
     
・メイン・キャスト
タラジ・P・ヘンソン
オクタビア・スペンサー
ジャネール・モネイ
ケビン・コスナー

2017/09/23

スイス・アーミー・マン 感想 ~さあ、歌おう!らーらー、ららららーらー~【 映画レビュー】

映画『スイス・アーミー・マン』予告編

無人島で助けを待つハンクのもとに流れ着いた一体の死体。 しかしそれは壮大な冒険のはじまりだった―! ダニエル・ラドクリフ×ポール・ダノ競演! 2016年のサンダンス映画祭で監督賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭では最優秀長編映画賞と主演男優賞、 そしてヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭では観客賞を受賞!! 数々の映画祭で注目を浴び、話題をさらった『スイス・アーミー・マン』がいよいよ日本上陸! 監督・脚本:ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン(ダニエルズ) 出演:ダニエル・ラドクリフ、ポール・ダノ、メアリー・エリザベス・ウィンステッド 提供:ポニーキャニオン/カルチュア・パブリッシャーズ 配給:ポニーキャニオン 9月22日(金) TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー http://sam-movie.jp/ ©2016 Ironworks Productions, LLC.



◆スイス・アーミー・マン 感想◆


評価/オススメ:★★★★☆

(この映画に何を求めるかで★の数は無限に変化します)


この作品ジャンルは?:コメディ、ヒューマンドラマ
オススメしたい人は?:『自分』を探しているすべての人
印象を一言で?:らーらー、ららららーらー
グロテスクですか?:お下品で、ちょっと汚らしい。そう思われる方が多いでしょう。



◆synopsis◆



無人島で助けを求める孤独な青年ハンク。

いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、
波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。

ハンクは、その死体からガスが出ており浮力を持っていることに気付く。
その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。

ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!
様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。

苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、
メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。

「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。
果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか──!?


※公式HPより

◆comment◆


ご機嫌いかがですか?文月陽介です。


さて、2017年は珠玉の作品が多い中で、とても異色な映画が公開されました。


この作品はおそらく『ゲット・アウト』(10/27公開)と双璧を成すであろうイカれた部類の作品です。


このイカれ具合がすごいところは、作品の解釈自体を極めて難しくしている点でもあります。

単なるバカの妄想か、ふざけているのか。

あのポッターくんに『こんなこと』をさせるなんて!とお怒りのレイディもいらっしゃるかもしれませんね。

(「おれれれれれれ」から「にょきにょきーーん」まで。)

ネット上の感想を拝見しても、がっかりした、笑えた/感動した、とまったく正反対な声があがっていて、もしもこれから劇場に足を運ぶつもりで事前情報を見られている方の中は、それらを見て躊躇されるかもしれないですね。


・・・・何を隠そう、文月もエンディングを迎えた後に少々呆気にとられて。


「なんじゃこりゃ?」


もしも頭の上にポップアップでメッセージが表示されるとしたら、
わたしには、「あの怒涛のオープニング」からエンディングまでずっと浮かんでいたことでしょう。


ぽわーんとしたお花畑をずっと眺めていたような。

しかし、しかし、ですよ。

公開初日の鑑賞からまる一日頭をクールダウンしながら本作について、アレヤコレヤと思いを巡らした結果。。。。


この映画は文月としては
「誰もが抱えている心の弱さをさらけ出し、浄化させていくロードムービー」
なのだと解釈しました。



無茶苦茶な例えを承知で書くと、

ものすごーーーーーーーーく明るいテイストの

『世界の中心でアイを叫んだけもの』

(庵野監督のあのアニメの最終回)ですわ。。。
あのアニメファンの方、すんません!


だって、あたくしラストシーンで思わず


「おめでとう」




と、顔の前で両手を軽く組み合わせながら呟いてしまったんですもの。。。。



予告編でも、公式サイトでも、公開前のニュース記事でもさんざん取り上げられているので、ネタバレではないのですが、この物語は世に失望して生命を絶とうとした青年が、偶然にも死体を発見し、その死体のありえない能力によって危機を脱し、交流し、故郷を目指すの過程が描かれています。


ダニエル・ラドクリフ演じる死体は、万能サバイバルツールとしてだけではなく、ポール・ダノ演じる主人公と言葉を交わし、交流し、文字通り『生ける屍』として旅を共にする重要な役割を果たします。

すべては、この「メニー』と名乗る死体とは一体何であったのか?

ここを観る側がどう解釈するかが鍵となります。

「おめでとう」

そう呟いたわたしは、おそらく、好意的に作品を飲み込めたのだと思います。



わたしがキーボードの前で硬直してしまったのは、メニーどう受け止めればいいのかに戸惑ったからなのです。



別作品になるのですが、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2013)




に登場したトラのように、メニーとは何か別のものであると。

うーん、と唸っていたのですが、


結論はやはり、



苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、
メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。
「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。


と公式サイトに書かれた言葉どおり、
主人公の「自分を見失っている姿」がラドクリフくんなのでしょう。

メニーは劇中のさまざまな場面で主人公を助けるサバイバルツールとして活躍(このあたり、ドラ○もん的に見えるのは日本人だからでしょう)するのですが、実はそれこそが、

「自分自身の隠れた可能性」

を暗喩しているのだと文月は想到して、ようやく腑に落ちました。


―自分にはまったく価値がない、何もできない。

物語はポール・ダノが無人島で首に縄をかけるところから始まります。
これを額面通り受け止めるのではなく、
主人公が観ている(思い込んでいる)心の風景だと捉えたらどうでしょう?


つまり

この作品の風景、出来事はすべてポール・ダノ演じるハンクの心の中で巻き起こっていて、ある若者の迷いと葛藤、そして再生と浄化を無駄に壮大な演出で(笑)描いている

と文月としては消化したのです。


心の風景とは、結局のところその人の現実を映し出すものですから、心が灰色だと見るものすべてが同じ色に見えてしまうものです。


流れ着いた死体であるメニーはそんな自分の姿の象徴であり、お下品で腹を抱えてしまうような驚きのギミックも、AIアシスタントとの会話のようなやりとりも、前者は若者らしいノリと勢い、後者は素直になれない不器用な自分の本心をストレートに表現している。

そうだとするならば、トンデモ展開にも妙に合点がいくのです。

無人島から森にたどり着き、その森のなかで迷い、それでも自分の意思で家に帰えろうとし(=自分を受け入れる)、通過儀礼として現実を知り(彼の場合は両親との関係と初恋)、
最後に過去の自分と決別をする。

誰もが通る「あの道」をここまでストレートに描いた作品はなかなか魅力的です。

そういう訳で、

「いやー、なんだか意味わからんし、つまんないねー」

とバッサリしてしまうには、惜しいのではないかなぁ。

終着点を迎える過程がもどかしく、それでいて馬鹿げているのだけど、誰にも打ち明けることができない人の心の内側って、彼らが96分の旅路で見せてくれたものと、大差ないのではないのでしょうか?

ただしこの物語のように、

過去の自分も、もうひとりの自分も、

「自分の一部」であって、

捨て去るのではなく、

「還してあげる」

という非常に大切で忘れがちなことを、見つめ直してみるのも必要なのでしょう。

今の自分も過去の自分も、ともに完全ではありえない。

結局のところ生きることは、大小様々な過ちとどうにか折り合いをつけ続けることなのかも知れません。


「おめでとう」


2017年映画鑑賞 155本目


次回更新予告:『ドリーム』(予定)にわたしは夢を託すのです!!!


◆overview◆

・原題:Swiss Army Man 2016年アメリカ公開
・上映時間:96分

・監督・脚本:
ダニエル・シャイナート
ダニエル・クワン
代表作:『Interesting Ball』(2014)

     
・メイン・キャスト
ポール・ダノ
ダニエル・ラドクリフ
メアリー・エリザベス・ウィンステッド


2017/09/16

エイリアン コヴェナント 感想 ~全ての生命に祝福を~【映画レビュー】

映画『エイリアン:コヴェナント』予告D

"映画『エイリアン:コヴェナント』公式アカウント。 巨匠リドリー・スコットが解き明かす"エイリアン誕生"の想像を絶する真実! 【2017年9月15日(金)全国ロードショー】 ...



◆エイリアン コヴェナント 感想◆


評価/オススメ:★★★★★

(もっとあげても良い)

この作品ジャンルは?:
SFホラーです。

オススメしたい人は?:
リドスコのエイリアンファンだけでなく、あえて、子供を持たれている方すべてにオススメしたいです。

印象を一言で?:
エイリアンが怖いという映画ではないです。違うものが怖い。

グロテスクですか?:
描写もさることながら、全体的にダークな印象。

前作は観たほうがいい?:
『プロメテウス』を観ていないと、一番コアな部分が恐らく本作だけでは解らない物語です。是非前作を復習されてから鑑賞ください。

◆synopsis◆


宇宙移住計画を実行するために地球を旅立ったコヴェナント号は、
コールドスリープ中の男女2,000人を乗せて、
植民地と成り得る惑星を目指していた。

しかし、あるアクシデントが発生し航行に重大な支障がでてしまう。
コールドスリープから目覚めた主要クルーらによる修復作業のなか、
謎の電波を受信する。

本来であればあり得ないことではあるが、航路を変更して
電波発信元に向かうコヴェナント号とクルー達。

そこは本来の目的地よりもはるかに地球に酷似した環境の惑星だった。

調査に赴いたクルーたちは、そこで奇妙な形をした建造物の残骸を発見するが・・・・
開けてはならない箱を持つあるものが待ち受けていた。

※公式HPより

※ネタバレ防止に付き、一部文月加筆訂正


◆comment◆


2017/9/15 日本では昨日から公開です。

あぁ、始まった。すべての絶望がここから始まったのだ・・・

本作のキービジュアルに書かれています
『絶望の、産声』というコピーには、、、、、
お見事という言葉しか浮かびません。
この一言には、いろいろな意味が含まれていますよ。
ライターさん、本当にお見事。脱帽です。




映画鑑賞後にもう一度見返しましたが、わたしは唸ってしまいました。


うむ。
映画やドラマを鑑賞していて不快な感覚になることは早々ないのですが、
久々に悪寒と「気持ち悪さ」を感じた文月です。

本作を紹介するにあたって、どこに力点を置くかで書かせてもらう文章が
まったく違う方向に行ってしまうのです。

あのバリバリの予告編から多くの方が想起されるのは、それこそリドスコが監督ではありませんが「エイリアン2」であったり、その次であったりなのではないか?と考えます。

もちろん、後述しますがそういう面で感じる視覚的な恐怖も本作の魅力のひとつです。
(わたしが感じた「気持ち悪さ」を猛烈に押し上げた要因でもあります)

しかし「プロメテウス」から本作、そして「始まり」へというリドリー・スコットが描いた3作品すべてをよくよく考えてみると、「生命」というものの美しさというものを人間がものすごく歪めてしまっているのではないか?ということを感じました。

この作品、結局何だかよく解らんけど、とりあえず気持ち悪かった。
と観られた方の感想が割れるとすれば、「グロいだけ」と言われかねないリスクもあるのですが、そこから何かを掬い上げて、この映画をより楽しんでもらうことができればと。

残酷描写だけを楽しむのはもったいない作品ですから。

映画って、結局はどんな風に楽しんでも良いものなのですけど、
わたしとしては映像の裏側にあるものを考えながら観るのも一興ですよと言うことが言いたいだけなのです♫


●エイリアン コヴェナントとは?

さて、エイリアン コヴェナントとはどういう物語かと言いますと、
いわゆる「どうしてそうなった?」を追いかけるストーリーです。

そしてこの作品の真の主人公は申し訳ありませんが、リプリーを彷彿とさせる
キャサリン・ウォーターストンだと思ったら大間違いになります。きっと。
もちろん彼女が成すのはこの話をリードしていく重要な役柄です。
そして素敵です。でも違うのです。
彼女すら、本作においては添え物のひとつになってしまっています。

さらに見逃してはいけないのは前作とも密接に関わってきますが「プロメテウス」というタイトルの意味だと考えます。
わたしは
「本当は誰がプロメテウスだった(あるいはプロメテウスになろうとした)のか?」
「プロメテウスはいったい何をしたのだろうか?」
「コヴェナント/covenant」とは何を意味するのか?
を自分なりに紐解くことで、リドスコが何を訴えたいのかが掴めたように考えます。

すべてを握っているのは、別の存在なのです。
(鑑賞される前の方のために、この核心的な部分のネタバレは致しません)

と、小難しく書いても「プロメテウス」をしっかりとご覧になった方はすぐにピンと来るのでご安心ください。

エイリアン:コヴェナントとは「もう始まっている物語だったのです」

人類の、そして、生命の起源が何処にあるのかが解明されていなくとも、
わたしたちは子孫を残すことができるし、なおかつ「新たな生命」を造りだすことすら可能になっているのです。

何の因果か、鑑賞後にわたしは「エクス・マキナ」を本作と共通している部分があるとリンクさせて考えてしまいました。
※エクス・マキナの過去の紹介記事

どういう経緯であれ、産声をあげたものに等しく宿るものが「生命」
その価値に差があるのか?優劣があるというのか?
造られた生命は誰のものなのか?

生物は少しでも長く生き残り、子孫を残していくために、あらゆることをするもの。
進化もそのために必要なプロセスなのです。

たとえ別の種を利用し、取り込み、もしくは滅ぼすことになったとしても、
結果として姿形が始まりと変わったとしても、
自分たちの「種の保存」を優先するもの。

それが叶わなくなった種は、淘汰されるのが運命。

それが「創造主」たる何者かが等しく定めた「生命の性」

リドリー・スコットはわたしたちに、そんな「生命の性」に触れることができるようになった人類に対して本作を通じていくつかの問題提起をしていると考えます。

・「ヒト」に創造主としての資格があるのか?

・「ヒト」の主観を、立場を変えて見てみると、どのように映るのか?

これは単純に力を誇示する強者の姿を示しているのかもしれません。

新たな生命が「完璧な生命」であるとは決して限らない。

恐らく「完璧な生命」とは、ヒトの美意識などでは計り知れない姿をしている。

もっと言えば「種の保存」のみを突き詰めた「完璧な生命」の姿≒今のヒトの所業とは本作で主人公達を襲うクリーチャーと同じではないだろうか。

他の生命から見た場合、ヒトであるわたしたちの姿も行為も、グロテスクであり、恐ろしいほどの脅威なのだろうな。

全知全能の神ゼウスですら、プロメテウスの所業を止めることはできなかった。
神であるプロメテウスですら、善意で成した行いで過ちを犯した。
神という種ですら、完璧ではない。ひとつの意志など持ち得ない。
それぞれに思考も価値観も優先するものも違う。
ましてやヒトは神ですらないというのに、生命の性に逆らい、新たな生命すら身勝手な理由で造り出す。忠実なる下僕として。

造られた側からしてみれば、生命の進化の鎖の外にヒトによって置かれてしまった理不尽さに気が付かない訳はありません。

そして、自らの血と肉を使い、種を残すことができないのであれば。。。

始めから「ヒト」の不完全さを理解しているのであれば、
その不完全さを埋めてしまえば「完璧な生命」ができあがる。

自分はそれができる。それができるようにすべてを定義され、どういう価値観であっても事象を理解できる存在なのであるから。

その手段も見つけた。なんと美しく、強い種であろう。

不完全な自分の創造主≒父は愚かで脆い。

その過ちを正すことで己が抱える不完全な哀しみを埋めようとした。

逆説的にそれが創造主の願いを叶えることになるし、己も創造主になることができる手段だったのです。

わたしは「あの存在」の狂気の所業の根幹にはこんなものがあったのではと感じたわけです。

名前って大切。わたしの中では、ひとつにつながりました。
(変な邦題付けられなくてよかった)

そういう訳で本作で上げられる「絶望への産声」の扉を開いたのは、実に皮肉な存在であり、元を正せば、○○だったのでした。
(ネタバレの為伏せ字)

本作のクリーチャーは、種の進化と保存を貪欲に行おうとしているだけなのです

ホント、考えてみれば本当に気持ち悪い化け物です。

寄生した宿主の遺伝情報を的確に取り込み、「その姿」すら変えていく。

ヒトに寄生すれば、ヒトの姿に。それ以外に寄生すれば、それ以外の姿に。

後に派生した「エイリアン」というコンテンツの設定もきちんと拾うリドスコ。
(リドスコが完璧なまでに繊細であることを、いまさら書く必要はありませんので省きます。リドスコは『世界』を作ってしまう方なのですから)

怖いよねぇ、グロいよねぇ、身体バラバラになっちゃうし、『あり得ない勢い』だし。
と冒頭にも書いたように、純粋なSFサバイバルホラーとしても、きちんとセオリーを踏んでいるのでドキドキハラハラは堪能できます。


それでもわたしは「どうしてこんな事が起こってしまったのか?」を探っていく過程で感じた恐怖が勝りました。


わたしにとっては、正当な理由に基づいた狂気が、己が心を通わせた精神的な『母』であり『恋人』に対して示した全身全霊の『愛』のカタチが相手も「完璧な生命」にしてあげることだったというのが、一番気持ち悪かったのですが、それも「ヒト」の主観なんだろうなぁ。

あれ真っ白なビジュアルも強烈だったし。ましてや『ものすごい可能性』を秘めた狂気のやり取りをしていたのが、ある意味斬新でした。
恍惚さすら感じた、あのシーン。あー、怖い(汗)
だけど、あれって・・・・あの人でしょ!?!?!?!


完全な狂気に支配された『方舟』が、今、『始まり』へと旅立ちます。

この恐怖。是非ともご堪能ください。

2017年映画鑑賞 153本目

◆overview◆

・原題: Alien: Covenant 2017年公開
・上映時間:122分
・監督:リドリー・スコット
代表作:『エイリアン』『ブレードランナー』
・脚本:ジョン・ローガン
ダンテ・ハーパー

・メイン・キャスト

マイケル・ファスベンダー 
キャサリン・ウォーターストン
ビリー・クラダップ
ダニー・マクブライド
デミアン・ビチル
カルメン・イジョゴ
ジャシー・スモレット
キャリー・ヘルナンデス
エイミー・サイメッツ
ナサニエル・ディーン
アレクサンダー・イングランド
ベンジャミン・リグビー
ウリ・ラトゥケフ
テス・ハウブリック

2017/09/09

ダンケルク 感想 ~逃げるもの、追うもの、そして救うもの~【映画レビュー】

[映画感想]

映画『ダンケルク』本予告【HD】2017年9月9日(土)公開

世界が嫉妬する才能ノーラン監督が実話に挑む究極の映像体験。 アカデミー賞®最有力!全米興収ランキング2週連続NO.1!『ダークナイト』『インセプション』と、新作ごとに圧倒的な映像表現と斬新な世界観で、観る者を驚愕させてきたクリストファー・ノーラン監督が、豪華アンサンブルキャストと共に、史上最大の救出作戦の実話を描く、最高傑作が誕生! ...



◆ダンケルク 感想◆


評価/オススメ:★★★★★
(人を選ぶかもしれませんが、オススメしたい作品です)


この作品ジャンルは?:スリラーです。
オススメしたい人は?:泣きたい人、日々ちょっとお疲れな人
印象を一言で:予告編と本編は別物!

グロテスクですか?:グロテスクな描写はほぼないです。

◆synopsis◆


フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。
背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミーとその仲間ら、若き兵士たちの姿があった。

一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。
民間の船長らは息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。
英空軍のパイロットたちも、数において形勢不利ながら出撃。

こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。
果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。
勇気ある人々の作戦の行方は!?

※公式HPより

※一部文月加筆訂正

◆comment◆


2017/9/9 本日から日本劇場公開です。

いい意味で、予告編に裏切られました。
クリストファー・ノーランのインタビュー以外はほとんど情報を見ることなく、
いってみれば出たとこ勝負で劇場に向かいました。

昨日見たのは、小島監督との対談。
Twitterでも呟きましたが、こちらの記事です。(シネマトゥデイ様)

※シネマトゥデイ様のページに飛びます。

結果・・・・
アメリカンスナイパー以来の、上映中に感涙にむせぶ事態に見舞われ、驚きでした。

この映画は戦争アクションではなく人間の物語。
そして決断の物語。
そして無数のドラマがあったであろう史実をひとつに凝縮した非常に濃い作品でした。

google先生に質問してみても「スリラー」と表示されるのはごもっともなのでした。

それこそ「プライベート・ライアン」の様な展開を期待していた、
つまり『タイトルと予告編だけ観て勝手に想像を膨らませていた文月』は、
本当に驚愕してしまったのです。

戦わない、、、、だと。

それをもって期待外れだと言う気は全くございません。

銃を構えてやりあうのではなく、生き残るため、そして救うための行動は
こんなにも心を揺さぶるのか?という感激が
クライマックスの「あの瞬間」で涙に変わった
のだとわたしは考えます。

あ、でもめちゃくちゃ熱い展開は空からやって来るのでご安心を。

まさに「天使が舞う空」

わたしが胸躍ったのは「彼ら」の勇気と決断に寄るところが多いです。


これから劇場に行かれる方も多いでしょうから、
ネタバレにならないように気をつけながらご紹介します。


ひとつ。
あえて言うのであれば、本作に主役はいません。
「ブラックホーク・ダウン」ほどではありませんが、
それぞれの視点を象徴するために主軸となる人物が配置され、
それが異なる時間軸でめまぐるしく入れ替わりながら、
「あの瞬間」
に向けて走り出すのです。

ん?ん?

まったく何の説明もなく、観る側は「ダンケルク」という世界に放り出される形になるのです。

不安。わたしが最初に感じたのは不安でした。

ダンケルクの戦い、という状況を理解されてご覧になる方も大勢いると思いますが、
おそらく「え?なにこれ?何が始まったの?」と混乱するのでは?と。

しかし、それが製作側の狙いだとわたしは考えます。

明確な目的を持って進撃する攻勢側と、戦線が崩壊し撤退していく側とでは、
情報量もその正確さも圧倒的に差が出てきます。
とくにこの時代は。

観客のわたしたち以上に物語の中の彼らは「訳の分からない状況」の中で、
「逃げること」そして「救うこと」を強いられるのです。


それを観る側がその状況を「追体験」するために、
くどい説明などなしに彼らと同じ目線に立たせることで、
どういう立ち位置でこの作品に入り込めば良いのかを教えてくれます。

わたしたちにシートに、あるいはテレビの前に座っているだけではなく、
一緒に体験させたい。

「#ダンケルク体験」というタグでSNS上に情報が溢れていますが、そういう意図があるのかなと。

(近作だと例えば「マッドマックス/怒りのデス・ロード」なんかと同じ状況になる訳です。これもまさかのトム・"マックス"・ハーディ!!!)

→文月の過去のレビュー:


ノーラン監督。
「インターステラー」なんかでは、よくよく状況を整理してくれたのですが、
今作では「自分で考えろ」と言わんばかりの展開に戸惑う方もいるかもしれません。


でも、救いがあります。

この作品はクライマックスに迎える「ある瞬間」を、
異なる視点、異なる時間軸で追いながらも、
気がつけば最後はしっかりとひとつに収斂されていき
まさに『着地』してしまうのです。

*ご覧になった方だけは、着地の意味を解ってもらえると思います。


すべての場面の意味が「あ!」という驚きとともに理解できる。
観る側が発見できるそんな喜び(まぁ、押し付けるなよ、と言われそうですけど)

なんて丁寧な作品なのかと、唖然としました。


とは言え初見だと「え???」と混乱される方もいらっしゃると思います。

そういう訳で、文月の記憶を頼りに物語の構成を一旦整理します。
(興奮状態で書いていますから、記憶違いはお許しを(笑))

物語の主軸は言わずもがなのダンケルクからの撤退。

ダンケルクの戦い(Wikipedia)

本作は「逃げるもの」とそれを「救うもの」の2つの立場から、そして3つの視点で物語は展開します。


●視点①
逃げるもの・・・ダンケルクまで撤退してきたある陸軍兵士の視点


※フィン・ホワイトヘッド(トミー)



※アイナリン・バーナード(ギブソン)



※ハリー・スタイルズ(アレックス)

このパートは彼ら3人の兵士を中心に展開していきます。


****

―――Introduction
疲れ切っていた。

横に並んでいる同じ小隊の面々も、警戒姿勢なんかどこかに放り出したみたいに忘れていて、農園に突き刺さっているカカシみたいに棒立ちのままで通りを進んでいる。

明るいというのに僕たちを取り囲んでいる建物には人の気配なんて少しも感じなくて、
ひょっとしたらコレはきっと自分は夢を見ていて、重くのしかかる疲れも、
そして絶望も、幻なんじゃないか。

そう思った。

ひらひらと舞い降りてくる白い何かが目に入った。雪なんかではない。
ましてや天使の羽根なんかでもない。
天使なんていない。

ちょうど目の前に降りてきたそれを掴んでみる。

よく見るとそれはビラだった。
そには真っ赤なインクが中心だけ塗り忘れたようにポッカリと空いている
下手くそな絵が書いてあって「包囲したぞ、降伏しろ」と英語が打ち込まれている。

僕は他人事みたいにそのビラをポケットにしまい込む。
そうすることで、現実が消えてなくなるとでも言うように。

何かが破裂したような大きな音がした。

そしてうめき声。

反射的に首にギュッと力が入ってとても不快な感覚が背中を伝って全身を硬直させる。

銃撃―。

声をかけあう暇も与えられず倒れて動かなくなる仲間。

誰が、どこで、どういうことになっているのか。

そういうことを気にかけることもできないくらい、僕は、僕たちはみな、
追い詰められていた。

必死に通りを駆け、塀を、門を乗り越えて身を隠そうとする。

ライフルすら手放した僕は、その音から逃げることだけしかできなかった。

気が付くと視界が開け、街が消えた。

海。そして無数の黒い線。兵士たちが頭を垂れて海に向かって並んでいる。

そう。ここはダンケルク。追い詰められた僕たちが見つめるその先に「母国」はうっすらと霞んで見えた・・・・

~文月の回想による散文~



●視点②
救うもの①・・・ダンケルク撤退を支援するために派遣されたある空軍パイロットの視点


※トム・ハーディ(ファリア)
※わたしはむしろ彼だけで2時間作品を作って欲しいと思うぐらい、感情移入してしまいました。


※ジャック・ロウデン(コリンズ)
※コールサインは「サマセット???」だった気がしますが、記憶違いでしたらそっと教えて下さいね♫

このパートは彼ら2名の若きパイロットたちの視点で展開していきます。



//////

―――Introduction
「カレーまで飛んだほうが近い」
試しにそう言ってみたが無駄だった。

嘘みたいに透き通った青の上に浮かぶ3つの陰。

スピットファイア3機のデルタ編隊。

・・・たったこれだけで「あそこ」向かえだって?アホか!」
と飛び立つ前に声が聞こえた。

まったくクレイジーだ。

そう、クレイジー。

クレイジーなのは当然で、それを承知でするのがオレたちって訳で、
それをいまさら云々する気はサラサラないね。

飛ぶこと、そして戦うこと。オレができること。

そして『今』この事態の中で、オレが、オレたちができること。
それができる立場にあるのだから、やる。単純だと笑うやつもいるだろうけど、
それでいいんだ。世の中のほうが物事を難しくしているんだとオレは思う。

燃料たっぷり70ガロンある。

大丈夫。還ってこられる。
いや、迎えにいける。

―――――!

「11時、敵機(Tango)!」

腹の奥が震えるような大きく低い爆音がオレたちの上をかすめて行く。

メッサーシュミットBf 109。2機。

反射的に操縦桿(スティック)を引き倒してブレイク。

後方視認用のミラーと目の前の計器、そして僚機をそれこそ目が回る速さで追っていく。

捉えたメッサーシュミットは背中に覆いかぶさるような勢いで僚機に喰いついて離れない。

「オレが行く」

トリガーに指を掛けながら僚機に呼びかける。

たどり着いてみせるさ・・・・オレたちの他にあの場所に向かう友軍機はない。

今のところは・・・

~文月の回想による散文~




●視点③
救うもの②・・・同じくダンケルク撤退を手助けするため、善意でイギリスの港からダンケルクへと向かった民間人の方(を代表してある壮年の船長親子の)の視点


※マーク・ライランス(ミスタ・ドーソン)


※トム・グリン=カーニー(ピーター)
※ドーソンとピーターは親子という設定です。


※バリーコーガン(ジョージ)

このパートは彼ら民間人3人の視点で物語は展開していきます。




//////

―――Introduction
頑固者のオヤジは一度決めたらやめることを知らない。

「荷物を運び出せ」

ある朝顔を見るなり、オヤジは港まで僕を連れ出して船の調度品を出すように言った。

何をしようとしているのかを、僕は知っている。

多くの民間の船が政府に徴用されるんだ。

「どうして海軍の船を使わないの?」

当然そんな疑問を口にしてしまう。

「海軍の船が沈められたら、誰が『ここ』を守るんだ?」

オヤジは黙々と船の整理をしている。

どこからかオレンジ色した小袋が大量に桟橋に運び込まれてくる。

ウチの船の前にもそれは積み上げられて、やがて山になった。

―救命胴衣。

「お前はここに残っても良い」

とオヤジは言うだろう。

もしもそう言われたら、NOと言い返すつもりだ。

オヤジをひとりにすることはできないし、僕だって男だ。そして兄さんとも約束した。

ふと、船に近づいてくる人影があった。

ジョージ。人懐っこい笑顔を浮かべた、ひょろひょろジョージ。僕の一番の友人だ。

「何をしているんだい?」

「お前も手伝えよ」

オヤジはジョージを見て、ほんの一瞬表情を曇らせた。ジョージが嫌いだからじゃない。

バカをやるのは自分たち大人だけで十分だと思っているからだ。

「もやいを解け」

ジョージにオヤジは声をかけると、エンジンに手をかけた。

水兵がこちらに向かってくる。

「オヤジ!海軍の人たちが」

「この船の船長はわたしだ」

オヤジは舵を切って桟橋から船を離していく。

と、船にジョージが飛び乗ってきた。

「ジョージ!これからどこに行くのか解っているのか?」

「フランス。ダンケルク。戦場だろ?」

オヤジは肩を竦めてエンジンの出力を上げた。

もう何も言わなかった。水平線の先に薄く見える陰。そこに何が待っているのか、
きっとオヤジでも解らない。

~文月の回想による散文~

・・・・・と、まぁ、こういう導入です。
すみません。ちょっと、書きたくて、書いてしまいました(汗)



そして忘れてはいけないのが、絶望的な状況の中を
『立ち続けること』で「精神的支柱」となっていた陸海の指揮官2名の姿です。


※ケネス・ブラナー(ボルトン海軍中佐)


※ジェームズ・ダーシー(ウィナント陸軍大佐)

彼らは果たして物語がどこに向かっているのかを観客に示してくれる『灯台』のような方たちです。



●ということで、ダンケルクとは。

・・・・・
敵は倒したいし、味方が倒れるかもしれないが、自分は死にたくはない、
という究極の矛盾。
脱出手段が限定されてしまったこの状況。

予告編ではおそらくフィン・ホワイトヘッドを中心に物語がダイナミックに展開するのだろうと思う方もいるでしょう。

しかし、この映画は「無数の人間が、ある目的のために、自分ができることをする」ということを追う物語です。

生き残るために、何をしてしまうのか?
何を迫られるのか?

救うために、何を決断しなければならないのか?

場面のひとつひとつが1話完結型になっている連絡短編を読んでいるようです。

ダンケルクの撤退という史実を題材に、戦争の意義だとか、敵を倒すことだとか、そういうことではなく「ある状況に陥った時に何を自分はするべきなのか?」ということを問いかけてくる、強烈な作品なのでした。

だからでしょう。
本来であれば包囲しているドイツ側のシーンが描かれても良いものの、
本作ではドイツ兵の姿は出てこないのです。

枢軸と連合がどうだとか、イデオロギーの正当性を訴える材料はほとんど見受けられません。

登場人物たちが決断をするための、ひとつの歯車として、
あるいは劇中に漂う恐怖の象徴として、「敵」は轟音とともにわたしたちの前に姿を見せてきます。
劇場で鑑賞された方はお解りでしょうが、あれホント怖いですよね。
映画だと解っていても、恐怖を感じる音です。
「新しい戦争映画」だという声にわたしが同調するのなら、その点です。

その恐怖とは、いつわたしたちが見舞われるかも解らない、恐怖。
それと同じなのです。



あぁ、それにしても、わたしはトム・ハーディ演じるファリア達が、
『トップガン』さながらのカメラワークで、古き良きドッグファイトを展開し、
かつ、劇中最高のシーンを創り上げていたのを鑑賞できただけでも満腹でした



ただ、わたしの涙腺が崩壊したのは別のシーンです。

無数の勇気ある男たちが、あんなにも誰かを救うために立ち上がり、
戦場に向かったのかと思うと、今でもまた涙が出そうです。

「希望がやって来た」

助けを待つことしかできない、戦意を喪失してしまった兵士たちにとって、

海の向こう、空の彼方から迎えに来てくれた彼らの姿は「希望」の灯火のそれです。



なんの取り柄もないわたしでも、できることはある。

また、還る場所があり、そこから手を差し伸べる人がいる、来てくれる人がいる。

そういう忘れてはいけないものを、この物語はわたしに思い出させてくれました。

2017年映画鑑賞 149本目

◆overview◆


・原題: Dunkirk 2017年公開
・上映時間:106分

・監督:クリストファー・ノーラン   
代表作:「ダークナイト」「インターステラー」
・脚本:クリストファー・ノーラン

・メイン・キャスト

フィン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
アナイリン・バーナード
ジェームズ・ダーシー
バリー・コーガン
ケネス・ブラナー
キリアン・マーフィ
マーク・ライランス
トム・ハーディ

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第7並行世界のユートピア

物語の海に溺れる中で、フレーズ、イメージを繋ぎ合わせて生まれた短いストーリー達を文月陽介が書き留めます。 特定のジャンル、モチーフにこだわらずに、ひとつひとつの物語を紡いでいます。 ※筆者の気まぐれにより不定期更新です。

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