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2017/05/14

メッセージ/Arrival 感想 ~世界は『言葉』でつくられている~【映画レビュー】

[映画感想]


◆メッセージ/Arrival 感想◆


評価/オススメ:★★★★☆

◆synopsis◆


突如地上に降り立った、巨大な球体型宇宙船。
謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、
“彼ら”が人類に<何>を伝えようとしているのかを探っていく。
その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは―。

◆comment◆


解った、だとか、解らないだとか大きく評価が割れる作品がある。
キャストもVFXもカメラワークも飛び越えて、物語の世界に「浸った」側が
得られるある種の充足感が「観てよかったぁ」って気持ちを引き出す呼び水になる。
その充足感得やすい作品と難しい作品がこの世界には存在する。

もちろん創り手側としては、そうした充足感をより多くの人に得て欲しいと常日頃考えている。それが仕事だし、それが対価の原資になるからだ。

ただ、それは商業としての物語のあり方を考えた場合。
面白い話。ワクワクさせる設定。紡がれる『言葉』の根底には「どうやって楽しんで(あるいは怖がって/考えて)もらえるか?」という「意図」があります。
だから「意図」をより多くの人に伝えるための、受け入れられるための『言葉』には明快さが不可欠だ。

ただし、明快だから受け入れられる、良い、と言う訳でもない。

『言葉』を用いる『意思疎通』の最大の難しさとは『解釈』という送り手/受け手双方のフィルターが内在するからだ。

『解釈』 この作品の重要なワードです。

ドゥニ・ヴィルヌーヴという監督はこういうことを狙って物語を作れる稀有な人物だ。

「複製された男」なんて人を選ぶし、難解で中二病的だし、根暗なトンデモ映画だ。
「プリズナーズ」、「複製された男」、「ボーダーライン」どの作品もワタクシは大好きだけど、描かれているのは「こちら側と向こう側」という線引が如何に曖昧で、移ろい易いものなのかだと思う。

つまり、描いているのは『人間』だということだ。

『言葉』つまり『言語』というものが一種類しかない世界だとしたら、物語が掴まえることができるものはひどく狭くて味気ないものだと思う。

故に面白いと思う方も、その逆の方も多い作品になると思います。
(「グレート・ウォール」や「無限の○人」などとは別の意味で)
これは制作側の意図(もっと言うと原作者の)であって、『解釈』が分かれるほど『狙い通り』になったということですよ。はい。

言葉繋がりで、ひとつだけ個人的に変えてほしいのはこの作品の邦題。
『メッセージ』で本当に良かったのかなぁと。。。

原題のArrivalじゃないと、誤解を与えると思う。
予告編の作りも、公式HPも『メッセージ』に主題を置かれているけど、
この映画の本質は『言葉』であり『時間』であり、このふたつがひとりひとりに
舞い降りた時に用いられる『LIFE』だ。

話を戻します・・・
実はちょっと前に試写会に幸運にも行けて、そこで観ておりました。
今週5/19(土)からようやく公開ということで、劇場に行かれる方もいるかと思い更新です。

この作品は『インデペンデンス・デイ』(1996年)や『インターステラー』(2014年)に並んでコメントされているのを散見しました。
文月としては、真っ先に思い浮かんだアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』やロバート・ゼメキスの『コンタクト』(1997年)寄りの物語だと考えます。

ファーストコンタクトというカタチを取った『意思疎通』の再定義を狙った思考実験。

これがこの映画です。

だから『インデペンデンス・デイ』みたいなド派手なアクションも熱い人間ドラマも、

『インターステラー』のような地球の危機や壮大な宇宙探索も、ありません。

そういうものを期待されてスクリーンの前に座った方はごめんなさい、きっと『面白くない』と思われるでしょう。

突如地球に舞い降りた12の『物体』が世界の主要な場所に陣取っていく様はなるほど『インデペンデンス・デイ』を彷彿とさせますね。

2017年の混沌とした世界なら、物体が現れた時点で即全面攻撃となっていたのかも知れませんな。

しかし、この物語では非常事態宣言は各地で出されますが、まずはきちんと『意思疎通』を図ろうとするのです。

黒塗りの種子然とした巨大飛行物体は地球のものであるのか?

そうでないなら、相手は誰なのか?

どういう目的を持っているのか?

どうやってこちらにやって来たのか?

劇中のあるシーンで印象的な言葉がありました。

「これはアボリジニと同じだ」

アボリジニと、固有名詞を出していますが、これは取りも直さず大航海時代(それ以前からも当然有りましたが)より欧州がアフリカ、アジア、アメリカ大陸に対して行った植民地政策の事を引き合いに出しています。

まぁ、人類の技術で察知できない方法で世界に同時に出現した『物体』とそれを動かしている『生命体』は、その存在を持って我々より数段優れた文明を持っていることは明らかです。

よって話を戻すと、『誰で』『どうして』『何のために』やって来たのかという事を正確に把握しなければなりません。

人間同士ですら『来られた側には無い技術』を提供する代償として『多大な利益』を引き出そうと画策してきた訳ですからね。

未知なる相手を前に『悪意の解釈』を持って対峙する訳です。

物語はこの未知なる存在とどのように『意思疎通』をしていくのか?

そして、ある重要なキーワードをどう『解釈』するのか?

その『解釈』を世界はどのように『共有』していくのか?

を巡って主軸が展開していきます。

その未知なる存在との交流、そこで交わされる『言葉』、彼らを巡る人間たちの『解釈』の違いを通して主人公の言語学者は『自分自身』についてある気付きを得ます。
彼らが残したメッセージというより、彼らによって気がついた○○。

だから原題は『Arrival』なんだ。と落ちるわけですね。。。。
(Arrivalを辞書で引くか、google先生に聞いてみてください)

世界には7,000以上の言語があると言われていて
(この辺は専門家ではないので、断定はしません。
引用 http://www.ethnologue.com/ (SIL International))
表記されるだけである言葉について7,000前後の『訳語』が存在するということになります。しかし『訳語』はあくまで『訳語』であって、それがニュアンスまで完全に一致しているかは不明瞭です。そもそも『そうした言葉がない』ということもありえます。

人は思考を表現するツールとして『言葉』を用いているのであって、そうした意味では『言葉』というものも実に曖昧だということになります。

曖昧な思考→例えば「あなたが好き」というのは言葉での表記ですが、込められた感情の強弱、表裏、度合いまでは完全に表せません。せいぜい絵文字を用いたり、文字の大きさを変えたりと、装飾することでなんとかニュアンスを「表現」できるくらいです。

言葉 /言語 の曖昧さ。
伊藤計劃の虐殺器官ではないですが、これがこの物語の根底です。
それでも解り合いたいから意思疎通をする。
それでも100%のコミュニケーションなんてない。
この「言葉」というツールの恐ろしさと素晴らしさ。

未知の存在、そして巡る言葉の解釈で、国同士が、組織が、個人が激しく揺れ動きます。

で、結局世界はどうなんの?

ここまで散々『言葉』と書いてきてなんですが、『時間』というのもこの作品の重要なファクターです。
この作品の壮大なトリックとは、
原作『あなたの人生の物語』ってタイトルに集約されていきます。
作者の関心や原作からすると、言葉そのもの、時間の概念の方がウェイトが高い印象。
この『時間』って概念。これもこの作品にやられたぁと思わせる深いキーワードです。
あぁ、これ以上書けない。

『よく良く解らない誰か』とどう向き合うのか?
『よく解らない自分』とどう向き合うのか?
そこに付け加えられるのが『母性』だということになると・・・
昔流行った「セカイ系」にも似た所にも通じた所にも行ってしまうやんけ・・・
ま、原作が発表されたのが1998年だからなぁ、とその時期の『言葉』に浸っているワタクシなんかはそういった『解釈』に毒されてしまっていますがΣ(´∀`;)

サイエンス・フィクションというより、スペキュレイティブ・フィクションとしてのSF作品。
言葉ひとつで個人も世間も国家さえも変えられてしまう現代。
この時代、この世界情勢だからこそ、観た時に考えさせられるものが多い。
未知の存在とは、膨らみすぎたゆえに見えなくなっている世界そのもののように感じられる。
非常に有意義な映画体験でした。
文月としては、是非とも『Arrival』して欲しい一本です。


2017年映画鑑賞 41本目

◆Overview◆


・原題:Arrival 2016年公開
・上映時間:116分
・監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ   
代表作:『ボーダーライン』(2015年)
    『プリズナーズ』(2013年)
          『複製された男』(2013年)
    『ブレードランナー2049』(2017年)
・脚本:エリック・ハイセラー

<メイン・キャスト>
エイミー・アダムス
ジェレミー・レナー
フォレスト・ウィテカー
マイケル・スタールバーグ
マーク・オブライエン


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