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2018/07/01

映画_ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(評価/★:3.6)ネタバレあり感想~遥か昔、銀河一の色男がまだピュアだった頃…~【映画レビュー】

「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」日本版予告
ハン・ソロ スターウォーズ 映画 感想 評価 オススメ

◆ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 鑑賞◆


評価/オススメ:★★★☆

文月的採点(36/50点) 
ハン・ソロ 映画 評価 感想 オススメ

この作品ジャンルは?:スペースオペラ

オススメしたい人は?:スターウォーズファン

印象を一言で?:あのニヒルな男の片鱗を垣間見よ!

グロテスクですか?:いいえ。

◆synopsis◆


「スター・ウォーズ」最新作!
シリーズ屈指の人気を誇るハン・ソロは、いかにして愛すべき悪党<ハン・ソロ>となったのか!?
スター・ウォーズのヒーロー伝説のはじまりを描く、ノンストップ・アクション大作。銀河一のパイロットを目指すハン・ソロと、生涯の相棒チューバッカ、そしてミレニアム・ファルコン号との運命の出会いとは?
やがて彼は、謎の美女キーラらと共にカリスマ性を持つベケットのチームに加わり、 “自由”を手に入れるために莫大な金を生む“危険な仕事”に挑む!

※公式サイトより

◆comment◆


2018.06.29 より公開です。
わたし昨日劇場で鑑賞して、今回はゆっくり投稿です。

というのも、
「なんでこんなにネットで叩かれているのかぁ」
と、思い返す時間が必要だったからです。

ご存じの方も多いと思いますが特にアメリカでは興行収入にも如実に現れていますしね。
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が5000万ドルの大赤字か
かく言うわたしも、劇場で涙を垂れ流して鑑賞した
「ローグワン/スター・ウォーズストーリー」や「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」
と比べると、そこまでエモーショナルにのめり込まなかったのです。

公平を期すために同じ外伝であるローグワンとの比較で本作をみてみると、
この感情の動きの差は「本編への繋がり」度合いに起因しているんでしょう。

ローグワンは、時系列的にも構成も内容もスター・ウォーズファンなら誰もが知っている「新たなる希望」へ直接繋がる物語であったがゆえに、ジェダイでもない無名の主人公たちと一緒に立ち上がることができ、ともに戦い、そして結末に胸を締めつけられたのだと言えます。

ローグワンを鑑賞後にレンタル屋に駆け込んで新たなる希望を手にしたくなるくらい、本編への密着度が高いものでした。

※わたしのローグワンと最後のジェダイの紹介記事はこちら↓↓
【映画 感想】ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー  ―それでも、自分だってできることはある― 映画_スターウォーズ 最後のジェダイ (評価★:5!!!!!!)ネタバレあり 感想~老兵は死なず、消え去るのみ~【映画レビュー】
翻って本作「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」ですが、
当たり前な話になることは承知でタイトル
ずばり「ソロ」への焦点が強すぎるがゆえに、
この物語だけで、本編を想起することはなかなか難しい。

もちろん、これまで様々創作されていた「ハン・ソロ」の過去が本作で公式に映像化された点を始めとして、

「ソロ」という名前の由来

相棒チューバッカとの出会い

愛用のブラスターとの出会い

悪友のランドとの邂逅

そして何よりも愛機であるミレニアムファルコン号との出会い

というファンが期待するポイントは抑えているんです。

だけど!チューイとランドとの出会いはいいとして、ブラスターやミレニアムファルコン号との出会いはもっと、劇的なカット割りしてほしかった!!!

これだけ作り込んでいたのに、アレはあっさりしすぎだぞ!

何よりも、主演のオールデン・エアエンライクが「ニヒルなナイスミドル」になる前の

「自信だけに満ち溢れたやんちゃ坊主な若きハン・ソロ」



を見事に演じきっていて、わたしとしては時間経過とともに、彼の立ち振舞いにハリソン・フォードのそれがチラつきました。

あぁ、あの挑戦的な眼、俺様感はいかにも「ハン・ソロ」らしい。

素直にそう思いました。

●物語の主要人物はこちら!クリックで拡大されます。
スマホの方は横に画面を傾けてください。

※一応、この登場人物ポスターがカード」みたいにデザインされているのは実は
「大きなフラグ」ですよ♪

ストーリーとしては潔いまでに単純明快。

惑星コレリアで裏稼業をしながら、幼馴染のキーラと貧しく暮らしながらも、いつかここを抜け出してパイロットになることを夢見ていたソロが、ある出来事からその機会を得るところから始まります。

しかし予期せぬアクシデントでキーラと離れ離れになってしまうのです。

ただ、この描き方をしたが故に問答無用でキーラとソロ(正確に言うと彼は「ハン」なのですが)の恋愛要素は確定
数年後に再会パターンです。

そこから先程書いた「ハン」が「ハン・ソロ」になり、さんざん泥臭い目に遭いながら成長していく過程が描かれていきます。

※しかし、「ソロ」の由来が帝国軍の入隊受付の時に「ある意味適当に」つけられた名だったとは。それはいいのですが、独りだから「ソロ」だったとか、英語はその時代ないでしょうに、という激しいツッコミが入りますな…

また、主要登場人物それぞれキャラが非常に立っていて、それも魅力なのです。

特にわたしが惚れたのはふたり!

まずはソロに「銀河で生きる流儀」を教えソロのトレードマークである「ブラスター」を与えた
バイアス・ベケット
ラストまで見通すと解りますが、
「ハン・ソロ」を作ったのはある意味ベケットです。
超絶ガンアクションはいちいちカッコイイ(西部劇ですな)
若きソロのメンター。
ルークにオビ=ワン・ケノービがいたように、ソロにはベケットがいたんです。

そしてミレニアムファルコン号の元の持ち主であるランドの相棒
L34−37
スターウォーズ初の「人権派(正確にはドロイド権派)」ドロイドであり、
超一級の「ナビゲーションシステム」を搭載しているのです。
さらに「彼女」「愛」を理解していて
目下1番の悩みは
「ランドがわたしに惚れている」
こと(爆笑)

劇中中盤で観られる
キーラとの「女同士の秘密の会話」は大注目!

「でも…できるの?」
できるわ(意味深)」

ホントに頭が切れて、情熱的で純真乙女な子。
初登場から、彼女の言動に目が離せません。


最後まで通して鑑賞すると、結局のところ本作は
「自由に生きるとは?」
ということが主眼に置かれていて

そのための障害とは、それぞれ様々な形の鎖となって人を縛り付けているということを描いています。

人は誰しも自由に生きたいと望むものです。今もね。

しかし、自由に生きている様に見えるわたしたちも、生きるためには
「人と関わらないといけない」
「何かしらの生活の糧を得なければいけない」
「生きるためにどうしようもなくて自分の大切なものを犠牲にしなくてはいけない」
(なにも犠牲にしていない人なんていませんな。サラリーマンは会社に縛られ、仕事に縛られ、顧客に縛られ、日々の時間を奪われ、庶民はやっとこさ生きてますもんね。いい車もいい家も仮に持っていてもきちんと対価は支払っているでしょ?)

そこに銀河を生き抜くためには
「誰も信じるな」
と教わるソロ。

それでも、それでも、
本作のソロは「人を信じる」んです。

信じたいと願っているんですけどね。

その青臭いところって、ホントいいなぁ。

彼を青臭いと感じてしまう今の自分が「大人の原理」に組み込まれていることが悲しくなります。

そうです。

なので、ハマった方にとっては、

評価(確率)なんて関係ないさ!

な、一本。

うーん、これは続編作らないと、意味深なクライマックスを観たわたしたちもヤキモキしたままになってしまう。

キーラとソロの悲恋フラグが立ちまくり。

そして、まさかの「ダース・モール」出現!(ちょいだけど)



うむ、この続編ありきの展開を「あざとさ」と捉えると、1本に納めきったローグワンの潔さと比較して評価がグンと下がってしまうんだろうな。

わたしの心はきっとそれを感じ取ったんだと思う。

ただあのやんちゃ坊主が、後にルークと出会ったときのニヒルなナイスミドルにどう変貌していくのかを追いたい!!!

2018年映画鑑賞 206本目

post from #pixelbook

◆overview◆


・原題:Solo: A Star Wars Story 2018年公開
・上映時間:135分

・監督:ロン・ハワード
代表作「ダークタワー」「白鯨との闘い」
・脚本:
ジョナサン・カスダン
ローレンス・カスダン
    
・メイン・キャスト
オールデン・エアエンライク
ウッディ・ハレルソン
エミリア・クラーク
ドナルド・グローバー
タンディ・ニュートン
フィービー・ウォーラー=ブリッジ
ヨーナス・スオタモ
ポール・ベタニー


2018/04/29

映画_俺の獲物はビンラディン(評価/★:2)ネタバレあり感想~世界を変えない方面の天才(人災)~【映画レビュー】

映画『オレの獲物はビンラディン』予告編
映画 俺の獲物はビンラディン ニコラスケイジ 大塚明夫


◆ 俺の獲物はビンラディン 鑑賞◆


評価/オススメ:★★

文月的採点(20/50点) 

この作品ジャンルは?:ブラック・コメディ

オススメしたい人は?:こういう話を見ても眉をひそめない寛容な人。

印象を一言で?:バカと天才は紙一重

グロテスクですか?:いいえ。

◆synopsis◆


コロラド州の片田舎。
愛国心にあふれた中年男のゲイリーは、米同時多発テロ事件の首謀者とされるテロリスト、オサマ・ビンラディンの居場所を政府がいつまでも見つけられないことに業を煮やしていた。

ある時、日課の人工透析中にゲイリーは神から啓示を受ける。
「パキスタンに行って、オサマ・ビンラディンを捕まえるのだ」
アメリカを救えるのは、オレしかいない!
使命感と愛国心を燃え立たせ、ゲイリーはビンラディン捕獲作戦を開始する。

※公式サイトより

◆comment◆


2017.12.7劇場公開 
2018.4.27よりレンタル開始の作品です。

さてさて、昨年映画ニュースでニコラス・ケイジのぶっ飛んだ予告編に不安と期待を寄せたものでした。
(Cvはもちろん大塚”スネーク”明夫さん)

本作はあのオサマ・ビンラディンを文字通り「とっ捕まえる」(殺害ではない)ために、

完全に自費で
完全に個人的な動機で
完全にぶっ飛んじゃっている男が

単身パキスタンに乗り込んで、実際に当局に拘束されたあるアメリカの中年おじさんの物語です。

しかも無罪放免されたという強運の持ち主。

ニコラス・ケイジ演じる主人公ゲイリー・フォークナーは実在の人物(存命中)なのです。

日本でも2010年にニュースになりました。
ビンラディン容疑者殺害が目的?パキスタンで米国人男性を拘束
通販で買った(笑)日本刀などをひっさげてパキスタンを徘徊していると想像するだけで笑えてくるのですが、
驚くべきことに別に彼は何らかのメンタル的にまずい方面の方では「ない」とのことなのです。
映画でも言及されていますが、複数の医者や拘束された際の検査では「異常無し」

完全に個人的な「思い」でこんな事を企てたんですな。

この「思い」≒「神様の声」とおっしゃっています。

めちゃくちゃ陽気で、子供っぽくて、情熱的で、おしゃべり。

ニコラス・ケイジにしろ、CVをしている大塚明夫さんにしろ、確かにこれまでで1番ハチャメチャなキャラクターを演じています。

それに、ニコラス・ケイジとなんとなく容姿が似ている(笑)
さすがの明夫さんも、今回は今までよりも当てるのが大変だったとのこと。
(ずっといつもよりトーン高い声だったですものね)

字幕/吹替のどちらでも楽しむことができます。
わたしはどちらも鑑賞しましたが、笑えます。

判別不可能!? ニコラス・ケイジ&ビンラディン誘拐を企んだ男の比較画像を独占入手 - Ameba News [アメーバニュース] こんなに喋るニコラス・ケイジは初めて!『オレの獲物はビンラディン』4/27発売のDVD 日本語吹替は大塚明夫さん&田中敦子さんに決定
劇中の随所に現れるゲイリーの言動は、コメディドラマとしておそらくかなり誇張されているのですが、元となる言動があってのことでしょうから、

ご本人は相当「自由な方」

なのです。

いい意味でアメリカを心から愛する(政府ではなく、アメリカの文化や陽気さ)気のいいおじさんなのですな。好意的に見れば。

海外からの輸入品をディスったりする冒頭のシーンは「誰もが口に出さなかった」ことを堂々と言ってのけているので、ハマればニヤニヤできるかもですが、◯ランプ大統領の言動と似ているので、それとなく風刺しているのかなぁとも。

よくもまぁ、次から次へ喋るな、アンタをエディー・マーフィーと対談させてみたいよ。

なんで彼があんな突拍子も無いことを計画して実行したのかなんですが、映画的にもご本人のぶっ飛んでいる理由にもなる「神様の声」

これとしか説明もされていないし、描かれていません。

ラッセル・ブランド演じる「それらしき人」が、本物なのかゲイリーの願望なのかわかりませんが、やる気スイッチ役として現れて、彼を面白おかしくけしかけます。

このあたり、
完全にキアヌ・リーブスの「コンスタンティン」の神様たちや
村上春樹の「海辺のカフカ」に出てくる◯ーネル・サンダース的なノリなのです。

50歳近くて、糖尿病だけど手先が器用で無駄に情熱的なオッサンがパキスタンに乗り込むまでの嘘八百や勢いだけの交渉なんかも、単純におもろいなぁと観ることができるでしょう。

あまり理解されないでしょうが、決して悪い人間ではないんですよ、というのはヒロインとその連れ子(正確には実の娘ではない)さんとの交流を通して描かれているのでその辺は丁寧かなぁと。

まぁ、今回は★をあまりつけていないのは「あくまでもコメディ」として、あの事件の裏側で巻き起こったエピソードのひとつを描いているのであって、多くの善意の市民たちの一側面を面白可笑しく映しているだけだからなのです。

あくまでも「コメディ」「ネタ」として御覧ください。

何回もアメリカと現地を行ったり来たりする展開が多すぎるので、劇中ヒロインが「またかよ」とうんざりしてしまうのと同じように、我々もうんざりしてしまうかも。

ということで、映画としては、それほど高い点はつけていません。

誰も傷つかないし、無害だし、何も教訓は得られない。
(あ、オッサンのせいで負傷した人はいるけど(^_^;))

だけどこういう情熱に突き動かされて、自分が成すべきことを信じて生きていけるのって、幸せですよねぇ。

現地のCIA職員との罵り合いも爆笑。

ゴールデンウィークなのでちょっとお家で休憩している時か、渋滞に巻き込まれてイライラしている車中で流すDVDにお困りなら、こちらでもどうですか?

下手に大作を流すよりも、いいかもね。

#俺の獲物はビンラディン
#映画レビュー
#旧作探訪

post from #pixelbook

◆overview◆


・原題:Army of One 2017年公開 上映時間:93分
・監督:ラリー・チャールズ
・脚本:ラジーブ・ジョセフ/スコット・ロスマン

・メイン・キャスト
ニコラス・ケイジ
ラッセル・ブランド
ウェンディ・マクレンドン=コービー
レイン・ウィルソン
デニス・オヘア
マシュー・モディーン
アメール・チャダ・パテル
ポール・シェアー
アドリアン・マルティネス

2018/03/30

映画_ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男(評価/★:3.5)感想~そしてダンケルクへ…~【映画レビュー】


『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』90秒予告編
映画 ウィンストンチャーチル 感想 評価 レビュー



◆ ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 鑑賞◆


評価/オススメ:★★★☆

文月的採点(35/50点) 
この作品ジャンルは?:歴史/ヒューマンドラマ

オススメしたい人は?:『ダンケルク』を鑑賞した人

印象を一言で?:誰だって責任を負うことには躊躇うもの

グロテスクですか?:いいえ

◆synopsis◆


1940年5月、第二次世界大戦初期。
ヒトラー率いるナチス・ドイツの勢力が拡大し、フランスは陥落間近、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。
内閣不信任決議が出されたチェンバレン首相の後任として、外相のハリファックスが最適任者だという声があがるが、本人はこれを固辞。
そこで、国民からの人気は高いが、たび重なる失策から政党内の “嫌われ者”であったウィンストン・チャーチルに白羽の矢が立つ。
朝から酒をたしなむ変わり者の夫を叱咤激励する妻クレメンティーンや、気難しくもウィットとユーモアに富んだチャーチルの言葉をタイピングする秘書エリザベスのサポートを受けながら、国難に陥ったイギリスの新首相に就任したチャーチルは、ドイツとの和平交渉をすすめるチェンバレンとハリファックスらに陰口を叩かれながらも、「決して屈しない」と徹底抗戦を誓う。

そんななか、ドイツ軍に追い込まれた英国軍はフランス・ダンケルクの海岸まで撤退し孤立状態となっていた。
30万人もの兵士が包囲され、救出するすべがない。
ならば彼ら兵士を救うべく船をダンケルクへ向かわせるのだ、大型船はもちろん、ボートや小型船など民間の船もすべて召集して。
こうしてダイナモ作戦が実行された。

日に日にナチス・ドイツの勢いは増す一方で、英国にも上陸の危機が迫る。
ヒトラーに屈するのか、それとも戦うのか。
ヨーロッパのみならず世界の運命がチャーチルの手に委ねられた。
日々悩み、葛藤するチャーチル。
そんな彼の姿に、就任当初はチャーチルに対して懐疑的だった英国王ジョージ6世も心を開き、二人は絆を育む。

そしてついに、チャーチルは歴史的決断を下す。

※公式HPより

◆comment◆


2018.3.30本日から公開の映画です。

ゲイリー・オールドマンをして「サンキュー、カズ」と言わしめた、
日本が誇る辻一弘さんが特殊メイク/ヘア&メイクデザインとして参加している作品。
アカデミー賞の授賞式が記憶に新しいですね。 

よって、注目度が余計に高まっていて、気になる人も多いのではないでしょうか?

本作は2017年に公開されたヒット作『ダンケルク』
(クリストファー・ノーラン監督)
のまさに舞台裏を描いた作品です。

チャーチルの生涯を描いたものではなく1940年5月10日の首相就任から29日のダンケルク撤退までのごくごく短い期間を描いた作品となっています。

また、戦争スペクタクル映画ではなく、イギリスとひいてはヨーロッパの運命を変えたこの激動の期間、チャーチルとその周囲が何を悩み、そしてどのような決断が行われたのかという過程がメインです。
派手なアクションはありませんのでご注意ください。
どちらかと言えばケビン・コスナーの「13日間」(2000年)に近い形の作品です。

奇しくも『ダンケルク』と表裏一体となってしまった本作。
2作まとめて鑑賞した方のほうが、いろいろなところが繋がっていることを想像する楽しみがあると思いますね。

映画『ダンケルク』についてのわたしの紹介記事はこちら↓↓
映画_ダンケルク 感想 (評価/★:5)~逃げるもの、追うもの、そして救うもの~【映画レビュー】

さて。

辻さん効果も相まって諸手を挙げた絶賛の嵐が吹き荒れるのかなぁと思いますが、

文月としては「ちょっと待てよ」と頭の片隅に警告ランプが点灯したのでした。

断っておきますが、辻さんのお仕事は最高です。

全く骨格の違うゲイリー・オールドマンをチャーチルに仕立て上げたのは魔法と表現するしかありません。

わたしが少し引っかかったのは「『チャーチル素敵!』と何も考えずにヒャッハーしちゃうのはどうかな?」という点でした。

人にはそれぞれ役割があって、
受け持つ役割に応じて伸し掛かる
「結果と責任」
が違うもの。

『オペラ』の様に展開する『実話』

これほどまでに『ドラマチック』な現実はそうそう無い。

時代そのものが『壮大な神話』の様だったあの時。

本作がどこまで事実に虚構を織り交ぜて作ったのかは、その方面に特化した方の論ずるところに譲りますが、これは実際にあった出来事なのです。

第2次大戦も、チャーチルの首相就任も、ダンケルクの撤退も、その後の戦火も、そして現代のわたしたちの生活も。

本作は政治家であり、父であり、夫であり、孤独を感じるひとりの男であるチャーチルそのものを非常に魅力的に描いています。

オープニングでチャーチルが顔に似合わず
ピンクのガウンを着て
ベッドから起き出すシーンからしてかなり『可愛い』のですが。思わず笑っちゃいました。。。

ピンクのガウンを着ているのは奥様に『子豚ちゃん』と呼ばれているからなんですがね。
それだけでも好感度あがっちゃうわ。

短気で、気難しく、酒と葉巻好きな小うるさいおじさん、という性格も冒頭でさらりと観せたり、強面のチャーチルが奥様にはけちょんけちょんに言われて、随伴する部下に「ちょっと席を外してくれ」と言い、一生懸命出会った頃の話を持ち出しながらなだめるシーン、
トイレに篭ってルーズベルト大統領に電話で「このままでは負ける」と独白するシーンなど、彼の人間らしいところをここまで描いた作品は少ないので、それは非常に良かったんですよ。

エピソードには事欠かないであろうチャーチル「らしさ」とリスペクトをゲイリー・オールドマンが見事に演じているのは映画としてはとても素晴らしい。

チャーチルが突然地下鉄に乗る重要なシーンは思わず涙ぐみました。
あのシーン好き。
実話なんだろうか、実話ならなおさら感動

だけど
本作は決して「政治家」を賛美する作品ではない
のです。

ダンケルクの成果を本作のポスターでも強調したあざとい書き方をしているのですが、その影で犠牲になった人々にもきちんと触れています。

そしてイギリスだとしても、アメリカだとしても、最も重い責任を押し付けておきながら、その人間を批判し、利用しようとする、言ってみれば「足の引っ張り合い」も演じている
「政治」そのものへの皮肉をドラマチックな演出を伴いながらも垣間見れます。

舞台が古代でも、中世でも、近世でも、そうした「決めることができる」特権を持った人間たちの誤謬、迷い、駆け引きの結果でわたしたちは左右されてしまう。

そして特権を持った人間達ですら、失敗の責任を負ってしまうような決断は「誰か他の人間にやってもらいたい」としている構図がありありと見えてくるのです。

チャーチルは結果的に歴史に名を残す政治家になりましたが、彼だって十全ではなかった。
劇中でも過去の失策をなじられて激昂する場面もあります。

とは言え、結局「誰かが決断をして、ひとりで責任を背負い込んで」世界は動いている。

責任を取らなくて良い立場にいる人間(大多数のわれわれ)はそういう意味で幸せなんだろうけど、そのあり方が問われる。

チェンバレンとハリファックス卿が本作ではその側面を代表して結果的に悪役を担っているのだけど、彼らを100%悪だと言い切れないところに、わたしたちが生きている世界のどうしようもない所があるんだと考えます。

そして決断を迫られ、責任を負わされる側のチャーチルの「孤独」

皮肉を言われ、怒り、イライラし、眠れなくなり、気力を失いかけてしまうあの姿…

就任から20日も経っていないのに、あれほど追い詰められていくひとりの男。

わたしたちも彼ほどではないけど「何かを決断して」生きている。

賛美されることなんてほとんどないけど、自分に足りないのは、チャーチルのように「言葉の力」で世界を動かしてしまう人間としてのスケールなんだろう。

それでも煙に巻いたような扇動的な演説だ!と耳の肥えた方は思うかもしれない。
(わたしもちょっと思っちゃったんですがね。具体的な事ではなく、精神論だけのように聞こえちゃうんですから)

それも「あの時代」をひとつの象徴なんだろう。

もっと「言葉」で世界を動かした男が、ヨーロッパからチャーチルを睨み付けていたのだから。


2018年映画鑑賞 110本目

post from #pixelbook

◆overview◆


・原題:Darkest Hour 2017年公開
・上映時間:125分

・監督:ジョー・ライト
代表作:『PAN ネバーランド、夢のはじまり』『アンナ・カレーニナ』
・脚本:アンソニー・マッカーテン
・特殊メイク/ヘア&メイクデザイン 辻一弘     

・メイン・キャスト

ゲイリー・オールドマン
クリスティン・スコット・トーマス

リリー・ジェームズ
スティーブン・ディレイン
ロナルド・ピックアップ
ベン・メンデルソーン

2017/09/09

映画_ダンケルク 感想 (評価/★:5)~逃げるもの、追うもの、そして救うもの~【映画レビュー】

[映画感想]

映画『ダンケルク』本予告【HD】2017年9月9日(土)公開

世界が嫉妬する才能ノーラン監督が実話に挑む究極の映像体験。 アカデミー賞®最有力!全米興収ランキング2週連続NO.1!『ダークナイト』『インセプション』と、新作ごとに圧倒的な映像表現と斬新な世界観で、観る者を驚愕させてきたクリストファー・ノーラン監督が、豪華アンサンブルキャストと共に、史上最大の救出作戦の実話を描く、最高傑作が誕生! ...
映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン


◆ダンケルク / Dunkirk  鑑賞


評価/オススメ:★★★★★
(人を選ぶかもしれませんが、オススメしたい作品です)

文月的採点(45/50点)

この作品ジャンルは?:スリラーです。

オススメしたい人は?:泣きたい人、日々ちょっとお疲れな人

印象を一言で:予告編と本編は別物!

グロテスクですか?:グロテスクな描写はほぼないです。

◆synopsis◆


フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。
背後は海。陸・空からは敵――そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミーとその仲間ら、若き兵士たちの姿があった。

一方、母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。
民間の船長らは息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。
英空軍のパイロットたちも、数において形勢不利ながら出撃。

こうして、命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。
果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。
勇気ある人々の作戦の行方は!?

※公式HPより

※一部文月加筆訂正

◆comment◆


2017/9/9 本日から日本劇場公開です。

いい意味で、予告編に裏切られました。
クリストファー・ノーランのインタビュー以外はほとんど情報を見ることなく、
いってみれば出たとこ勝負で劇場に向かいました。

昨日見たのは、小島監督との対談。
Twitterでも呟きましたが、こちらの記事です。(シネマトゥデイ様)

※シネマトゥデイ様のページに飛びます。

結果・・・・
アメリカンスナイパー以来の、上映中に感涙にむせぶ事態に見舞われ、驚きでした。

この映画は戦争アクションではなく人間の物語。
そして決断の物語。
そして無数のドラマがあったであろう史実をひとつに凝縮した非常に濃い作品でした。

google先生に質問してみても「スリラー」と表示されるのはごもっともなのでした。

それこそ「プライベート・ライアン」の様な展開を期待していた、
つまり『タイトルと予告編だけ観て勝手に想像を膨らませていた文月』は、
本当に驚愕してしまったのです。

戦わない、、、、だと。

それをもって期待外れだと言う気は全くございません。

銃を構えてやりあうのではなく、生き残るため、そして救うための行動は
こんなにも心を揺さぶるのか?という感激が
クライマックスの「あの瞬間」で涙に変わった
のだとわたしは考えます。

あ、でもめちゃくちゃ熱い展開は空からやって来るのでご安心を。

まさに「天使が舞う空」

わたしが胸躍ったのは「彼ら」の勇気と決断に寄るところが多いです。


これから劇場に行かれる方も多いでしょうから、
ネタバレにならないように気をつけながらご紹介します。


ひとつ。
あえて言うのであれば、本作に主役はいません。
「ブラックホーク・ダウン」ほどではありませんが、
それぞれの視点を象徴するために主軸となる人物が配置され、
それが異なる時間軸でめまぐるしく入れ替わりながら、
「あの瞬間」
に向けて走り出すのです。

ん?ん?

まったく何の説明もなく、観る側は「ダンケルク」という世界に放り出される形になるのです。

不安。わたしが最初に感じたのは不安でした。

ダンケルクの戦い、という状況を理解されてご覧になる方も大勢いると思いますが、
おそらく「え?なにこれ?何が始まったの?」と混乱するのでは?と。

しかし、それが製作側の狙いだとわたしは考えます。

明確な目的を持って進撃する攻勢側と、戦線が崩壊し撤退していく側とでは、
情報量もその正確さも圧倒的に差が出てきます。
とくにこの時代は。

観客のわたしたち以上に物語の中の彼らは「訳の分からない状況」の中で、
「逃げること」そして「救うこと」を強いられるのです。


それを観る側がその状況を「追体験」するために、
くどい説明などなしに彼らと同じ目線に立たせることで、
どういう立ち位置でこの作品に入り込めば良いのかを教えてくれます。

わたしたちにシートに、あるいはテレビの前に座っているだけではなく、
一緒に体験させたい。

「#ダンケルク体験」というタグでSNS上に情報が溢れていますが、そういう意図があるのかなと。

(近作だと例えば「マッドマックス/怒りのデス・ロード」なんかと同じ状況になる訳です。これもまさかのトム・"マックス"・ハーディ!!!)

→文月の過去のレビュー:


ノーラン監督。
「インターステラー」なんかでは、よくよく状況を整理してくれたのですが、
今作では「自分で考えろ」と言わんばかりの展開に戸惑う方もいるかもしれません。


でも、救いがあります。

この作品はクライマックスに迎える「ある瞬間」を、
異なる視点、異なる時間軸で追いながらも、
気がつけば最後はしっかりとひとつに収斂されていき
まさに『着地』してしまうのです。

*ご覧になった方だけは、着地の意味を解ってもらえると思います。


すべての場面の意味が「あ!」という驚きとともに理解できる。
観る側が発見できるそんな喜び(まぁ、押し付けるなよ、と言われそうですけど)

なんて丁寧な作品なのかと、唖然としました。


とは言え初見だと「え???」と混乱される方もいらっしゃると思います。

そういう訳で、文月の記憶を頼りに物語の構成を一旦整理します。
(興奮状態で書いていますから、記憶違いはお許しを(笑))

物語の主軸は言わずもがなのダンケルクからの撤退。

ダンケルクの戦い(Wikipedia)

本作は「逃げるもの」とそれを「救うもの」の2つの立場から、そして3つの視点で物語は展開します。


●視点①
逃げるもの・・・ダンケルクまで撤退してきたある陸軍兵士の視点

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※フィン・ホワイトヘッド(トミー)


映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※アイナリン・バーナード(ギブソン)


映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※ハリー・スタイルズ(アレックス)

このパートは彼ら3人の兵士を中心に展開していきます。


****

―――Introduction
疲れ切っていた。

横に並んでいる同じ小隊の面々も、警戒姿勢なんかどこかに放り出したみたいに忘れていて、農園に突き刺さっているカカシみたいに棒立ちのままで通りを進んでいる。

明るいというのに僕たちを取り囲んでいる建物には人の気配なんて少しも感じなくて、
ひょっとしたらコレはきっと自分は夢を見ていて、重くのしかかる疲れも、
そして絶望も、幻なんじゃないか。

そう思った。

ひらひらと舞い降りてくる白い何かが目に入った。雪なんかではない。
ましてや天使の羽根なんかでもない。
天使なんていない。

ちょうど目の前に降りてきたそれを掴んでみる。

よく見るとそれはビラだった。
そには真っ赤なインクが中心だけ塗り忘れたようにポッカリと空いている
下手くそな絵が書いてあって「包囲したぞ、降伏しろ」と英語が打ち込まれている。

僕は他人事みたいにそのビラをポケットにしまい込む。
そうすることで、現実が消えてなくなるとでも言うように。

何かが破裂したような大きな音がした。

そしてうめき声。

反射的に首にギュッと力が入ってとても不快な感覚が背中を伝って全身を硬直させる。

銃撃―。

声をかけあう暇も与えられず倒れて動かなくなる仲間。

誰が、どこで、どういうことになっているのか。

そういうことを気にかけることもできないくらい、僕は、僕たちはみな、
追い詰められていた。

必死に通りを駆け、塀を、門を乗り越えて身を隠そうとする。

ライフルすら手放した僕は、その音から逃げることだけしかできなかった。

気が付くと視界が開け、街が消えた。

海。そして無数の黒い線。兵士たちが頭を垂れて海に向かって並んでいる。

そう。ここはダンケルク。追い詰められた僕たちが見つめるその先に「母国」はうっすらと霞んで見えた・・・・

~文月の回想による散文~



●視点②
救うもの①・・・ダンケルク撤退を支援するために派遣されたある空軍パイロットの視点

映画 ダンケルク Dunkirk トム・ハーディ

※トム・ハーディ(ファリア)
※わたしはむしろ彼だけで2時間作品を作って欲しいと思うぐらい、感情移入してしまいました。

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※ジャック・ロウデン(コリンズ)
※コールサインは「サマセット???」だった気がしますが、記憶違いでしたらそっと教えて下さいね♫

このパートは彼ら2名の若きパイロットたちの視点で展開していきます。



//////

―――Introduction
「カレーまで飛んだほうが近い」
試しにそう言ってみたが無駄だった。

嘘みたいに透き通った青の上に浮かぶ3つの陰。

スピットファイア3機のデルタ編隊。

・・・たったこれだけで「あそこ」向かえだって?アホか!」
と飛び立つ前に声が聞こえた。

まったくクレイジーだ。

そう、クレイジー。

クレイジーなのは当然で、それを承知でするのがオレたちって訳で、
それをいまさら云々する気はサラサラないね。

飛ぶこと、そして戦うこと。オレができること。

そして『今』この事態の中で、オレが、オレたちができること。
それができる立場にあるのだから、やる。単純だと笑うやつもいるだろうけど、
それでいいんだ。世の中のほうが物事を難しくしているんだとオレは思う。

燃料たっぷり70ガロンある。

大丈夫。還ってこられる。
いや、迎えにいける。

―――――!

「11時、敵機(Tango)!」

腹の奥が震えるような大きく低い爆音がオレたちの上をかすめて行く。

メッサーシュミットBf 109。2機。

反射的に操縦桿(スティック)を引き倒してブレイク。

後方視認用のミラーと目の前の計器、そして僚機をそれこそ目が回る速さで追っていく。

捉えたメッサーシュミットは背中に覆いかぶさるような勢いで僚機に喰いついて離れない。

「オレが行く」

トリガーに指を掛けながら僚機に呼びかける。

たどり着いてみせるさ・・・・オレたちの他にあの場所に向かう友軍機はない。

今のところは・・・

~文月の回想による散文~




●視点③
救うもの②・・・同じくダンケルク撤退を手助けするため、善意でイギリスの港からダンケルクへと向かった民間人の方(を代表してある壮年の船長親子の)の視点

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※マーク・ライランス(ミスタ・ドーソン)

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※トム・グリン=カーニー(ピーター)
※ドーソンとピーターは親子という設定です。

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※バリーコーガン(ジョージ)

このパートは彼ら民間人3人の視点で物語は展開していきます。




//////

―――Introduction
頑固者のオヤジは一度決めたらやめることを知らない。

「荷物を運び出せ」

ある朝顔を見るなり、オヤジは港まで僕を連れ出して船の調度品を出すように言った。

何をしようとしているのかを、僕は知っている。

多くの民間の船が政府に徴用されるんだ。

「どうして海軍の船を使わないの?」

当然そんな疑問を口にしてしまう。

「海軍の船が沈められたら、誰が『ここ』を守るんだ?」

オヤジは黙々と船の整理をしている。

どこからかオレンジ色した小袋が大量に桟橋に運び込まれてくる。

ウチの船の前にもそれは積み上げられて、やがて山になった。

―救命胴衣。

「お前はここに残っても良い」

とオヤジは言うだろう。

もしもそう言われたら、NOと言い返すつもりだ。

オヤジをひとりにすることはできないし、僕だって男だ。そして兄さんとも約束した。

ふと、船に近づいてくる人影があった。

ジョージ。人懐っこい笑顔を浮かべた、ひょろひょろジョージ。僕の一番の友人だ。

「何をしているんだい?」

「お前も手伝えよ」

オヤジはジョージを見て、ほんの一瞬表情を曇らせた。ジョージが嫌いだからじゃない。

バカをやるのは自分たち大人だけで十分だと思っているからだ。

「もやいを解け」

ジョージにオヤジは声をかけると、エンジンに手をかけた。

水兵がこちらに向かってくる。

「オヤジ!海軍の人たちが」

「この船の船長はわたしだ」

オヤジは舵を切って桟橋から船を離していく。

と、船にジョージが飛び乗ってきた。

「ジョージ!これからどこに行くのか解っているのか?」

「フランス。ダンケルク。戦場だろ?」

オヤジは肩を竦めてエンジンの出力を上げた。

もう何も言わなかった。水平線の先に薄く見える陰。そこに何が待っているのか、
きっとオヤジでも解らない。

~文月の回想による散文~

・・・・・と、まぁ、こういう導入です。
すみません。ちょっと、書きたくて、書いてしまいました(汗)



そして忘れてはいけないのが、絶望的な状況の中を
『立ち続けること』で「精神的支柱」となっていた陸海の指揮官2名の姿です。

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※ケネス・ブラナー(ボルトン海軍中佐)

映画 ダンケルク Dunkirk クリストファー・ノーラン

※ジェームズ・ダーシー(ウィナント陸軍大佐)

彼らは果たして物語がどこに向かっているのかを観客に示してくれる『灯台』のような方たちです。



●ということで、ダンケルクとは。

・・・・・
敵は倒したいし、味方が倒れるかもしれないが、自分は死にたくはない、
という究極の矛盾。
脱出手段が限定されてしまったこの状況。

予告編ではおそらくフィン・ホワイトヘッドを中心に物語がダイナミックに展開するのだろうと思う方もいるでしょう。

しかし、この映画は「無数の人間が、ある目的のために、自分ができることをする」ということを追う物語です。

生き残るために、何をしてしまうのか?
何を迫られるのか?

救うために、何を決断しなければならないのか?

場面のひとつひとつが1話完結型になっている連絡短編を読んでいるようです。

ダンケルクの撤退という史実を題材に、戦争の意義だとか、敵を倒すことだとか、そういうことではなく「ある状況に陥った時に何を自分はするべきなのか?」ということを問いかけてくる、強烈な作品なのでした。

だからでしょう。
本来であれば包囲しているドイツ側のシーンが描かれても良いものの、
本作ではドイツ兵の姿は出てこないのです。

枢軸と連合がどうだとか、イデオロギーの正当性を訴える材料はほとんど見受けられません。

登場人物たちが決断をするための、ひとつの歯車として、
あるいは劇中に漂う恐怖の象徴として、「敵」は轟音とともにわたしたちの前に姿を見せてきます。
劇場で鑑賞された方はお解りでしょうが、あれホント怖いですよね。
映画だと解っていても、恐怖を感じる音です。
「新しい戦争映画」だという声にわたしが同調するのなら、その点です。

その恐怖とは、いつわたしたちが見舞われるかも解らない、恐怖。
それと同じなのです。



あぁ、それにしても、わたしはトム・ハーディ演じるファリア達が、
『トップガン』さながらのカメラワークで、古き良きドッグファイトを展開し、
かつ、劇中最高のシーンを創り上げていたのを鑑賞できただけでも満腹でした



ただ、わたしの涙腺が崩壊したのは別のシーンです。

無数の勇気ある男たちが、あんなにも誰かを救うために立ち上がり、
戦場に向かったのかと思うと、今でもまた涙が出そうです。

「希望がやって来た」

助けを待つことしかできない、戦意を喪失してしまった兵士たちにとって、

海の向こう、空の彼方から迎えに来てくれた彼らの姿は「希望」の灯火のそれです。



なんの取り柄もないわたしでも、できることはある。

また、還る場所があり、そこから手を差し伸べる人がいる、来てくれる人がいる。

そういう忘れてはいけないものを、この物語はわたしに思い出させてくれました。

2017年映画鑑賞 149本目

◆overview◆


・原題: Dunkirk 2017年公開
・上映時間:106分

・監督:クリストファー・ノーラン   
代表作:「ダークナイト」「インターステラー」
・脚本:クリストファー・ノーラン

・メイン・キャスト

フィン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
アナイリン・バーナード
ジェームズ・ダーシー
バリー・コーガン
ケネス・ブラナー
キリアン・マーフィ
マーク・ライランス
トム・ハーディ

2017/03/11

【映画 感想】13時間 ベンガジの秘密の兵士  ―ランボーなんかいない。厄介者達が守りきった、2012年のアラモライン―

[映画感想]


13時間 ベンガジの秘密の兵士 鑑賞

原題: 13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi
2016年公開

オススメ:★★★★★

※サブタイトルがなんだかファンタジー調に見えますが、ゴリゴリのシリアスドラマです。

―経緯、原因、背後関係、過去の負の遺産。
何万語を費やしても、そして費やさなくとも、「シンボル」となってしまうものがある。

9.11。(そして日本なら3.11)

こんなにも短い数字が物語るのは僕達なんかが軽々しく書くこともできないものなんだと個人的には思う。
ネガティブでも、ポジティブにでも「シンボル」はどうしようもないくらい「シンボル」なのだ。
2012/9/11。その日にリビアで起こった事件を描いたこの映画は9.11という数字が、アメリカにとって、世界にとってどのようなものなのかということを再認識させるものだ。

いつだって本当は必要であるはずの人が、邪険に扱われることはある。
インテリジェンスの最高峰だと自負しているCIA(の神話は崩れてしまったけど)の情報局員たちは名門大学を出て、成功を約束された、あるいは世界を変えているのは自分たちとと信じてそれぞれの「準軍事作戦」やら「諜報工作」に従事してる。

彼らにも彼らの言い分はあることは認めるけど、「使う側」の人たちなのだ。
だから自分たちの仕事を邪魔する連中は厄介者だと感じてしまう。
彼らの任務は「危険地域」で行われているという事実と任務を全うするには「安全」であることが大前提だということを忘れて。

この物語の主要人物たちは元軍人でプロフェッショナルではあるけども、「使われる側」の民間軍事会社の職員だ。
使っているCIAからすれば「部外者」だし「金食い虫」だし「ごちゃごちゃ言わずに静かにしていろ」って存在。

あくまで外注さん。こう言えば、サラリーマンとしてはしっくり来るのかも。
一緒に仕事をするけど、身内ではない・・・そんな感覚。
それってちょっと切ないと個人的には思うのだけど。

しかし、そんな使う側の彼らも、結局はピラミットの頂点にはいない。
それが緊急事態の際に露見する。
自分たちこそ、他国に居座る部外者(=厄介者)だということが・・・
「誰も助けに来ない」という事実とともに。

圧倒的な怒り、暴力の前では、生まれも、育ちも、容姿も、性別も、学歴も、年収も、キャリアも、将来性も、全く無意味だ。

そうした時に顔色ひとつ使えずに、「自分たちが助けに行く」「自分たちが守る」と淡々と装備を手に取る男たち。それが「部外者」で「金食い虫」で「ごちゃごちゃ言わずに静かにしていろ」と言われていた厄介者たちだった。

漢。

本筋で言えば、民間軍事会社の職員である彼らは「元軍人」ではあるが、契約外(映画を見ればイレギュラーの付随業務として一時的に命じられる事情もあるのだけど)の異常事態に対してここまで危険を犯す必要はないように思える。

それでも仲間の、同国人の(対象がVIPであることも、この際脇において)、危機を見捨てない。10人にも満たないチームでも、「自分たちができるとこ」を遂行する。

上から目線で見下すようにしていた彼らの背中に、戦う姿に、「使う側」の人間たちが何を感じたのか。

そして、ランボーなんかいない現実の戦闘では、失われるものが多すぎる。。。。
同じ実話をベースにしたものでも、
ブラックホーク・ダウン(2001年)の様に、大勢の仲間がいるわけでもない。
※モガディシュの戦闘を参照
ローン・サバイバー(2013年)の様にQRF(即応部隊)がやって来る希望もない。
※レッド・ウィング作戦を参照

いつまで、どこまで戦えば良いのか?を胸に秘めながら目の前の事態に向き合う彼らの悲壮感が怒号と銃声、爆音のなかに浮かんでは消えていく。
勝者などいない、戦場で。

あぁ、マイケル・ベイ監督=トランスフォーマーと思ってしまいがちだけど、もちろんもちろん、それだけじゃない事がよく分かる。
ワタクシは「ザ・ロック」の頃から大好きです♫

2017年映画鑑賞 56本目

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第7並行世界のユートピア

物語の海に溺れる中で、フレーズ、イメージを繋ぎ合わせて生まれた短いストーリー達を文月陽介が書き留めます。 特定のジャンル、モチーフにこだわらずに、ひとつひとつの物語を紡いでいます。 ※筆者の気まぐれにより不定期更新です。

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